藍色 ページ12
名前:拓
「僕に構わないでくれる?」
いつも通りの態度の僕に、クラスメイトの一人が苦笑した。
愛想笑いをするならもっとうまくやってくれないものか。
しかし彼の後ろには僕の言葉通りに放っておこうというやつもいる。そのほうが有難い。
…休み時間、彼はいきなり声をかけてきた。
急に話題を振られても、その輪の中に僕はいなかったはずだ。
そいつらの言うとおりに僕なんか放っておけばいいのに。
僕に声をかけてきた奴の言葉を思い出す。
正義のヒーローでも気取っているか知らないが、寒気のする言葉ばかり。
同じクラスになったからといって仲良くしなきゃいけないわけではない。
中でも、“クラスの友達だから”なんて言葉には吐き気すら覚えた。小学二年生かよ。
流石に僕にだって友達を選ぶ権利はあるだろう。
…こんな奴らと仲良しこよしはしたくない。
ベタベタと馴れ馴れしい。
「…うっさいな。別に僕が何処行こうがお前に関係ないだろ。僕に構うなって言ってんの」
向こう側にしてもこんな奴相手にしたって面白くも楽しくもない。
僕だってオトモダチごっこをしながら話すのは不快でしかない。
そんなこと互いに分かり切っているのに何故ああもしつこく構うのだろうか。
目的地もなく教室を出て、廊下を歩いていく。
屋上へ行きたいが、残念ながらこの学校の屋上は基本的に立ち入り禁止で、そこでサボることは叶わない。
頭に浮かんでいる候補は三つ。屋上ドアの前の小さなスペース。階段を登ればすぐだし、屋上自体が立ち入り禁止なので人が来ることはめったに無い。。
もう一つは図書室。授業で使われなきゃあそこが一番静かな場所だろう。
最後は仮病を使い保健室。寝ていられるが、他の生徒がいる可能性もある。
他人と顔を合わせるのはなるべく控えたい。
(さて…どうしようかな)
・
暗闇の中、誰かが僕の名前を呼ぶ。
誰かが僕の体を揺する。
「…うぅん…うるっさい……誰だよ…やめろ、触るな…」
肩に触れている手を振り払う。
だけどその手はまた僕の肩に触れて何度も体を揺すった。
ぼんやりとした意識の中、声の主がハッキリしてくる。
そしてようやく、「拓くん」と呆れ気味のお前の声が、すぐそばで聞こえた。
「…A?」
顔を上げると、目の前にお前の顔があった。
名前を呼ばれた数秒後にお前は「おはよう」と眉を下げて笑う。
その言葉で自分が寝ていたことを自覚した。
「…おは、よう…。あれ、今何時…?…ああ、もう昼休みか…」
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年7月21日 17時