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…35… ページ37

「おいらも手伝うッすー!!」


「うるせえぞ、宙太郎。静かにな」



ドタドタと荒々しく部屋に入り込んできた三男は、曇の隣に座り

あたりをきょろきょろした

曇は、部屋を出てこちらの着替えを取りに行ったようだ



「…Aさん、大丈夫っすか…?」



不安げに聞いてきた三男

なんでか

じわ

と心が痛んだ気がして、涙がでそうになった



「…大丈夫」


「傷だらけっすね…」


「…うん」


「A、服の袖めくるよ」



片腕をあげて、白子は腕をふき始めた

その腕にも、傷や火傷を負った跡が多々あった



「痛くないか」


「…平気」


「持ってきたぞ」


「兄貴邪魔。…お粥作れましたけど…」


「隣に置いておいてくれるか」


「分かりました」



着替えを乱暴に、でも崩さないように

布団の隣に置く


次男は白子の隣に座ってお粥をゆっくりおいた



「今食べれそうか?」



不安げに聞いた次男の目は

…真っ直ぐに此方を見ていて

…これまた胸が苦しくなる。



「…ああ、頂く」



そう答えると、次男がお粥をすくい

こちらに向けてくれる

それを小さな一口でいただく。



「…」



もぐ…もぐ…とゆっくりゆっくり味わう

…お粥なのだから、味わうと言っても言うほど味があったり豪華なものではない

…けれど

なんだがそれが口に入ったときに

泣きそうになった


それを察したのか何なのか


曇はこちらの頭に腕を巻き

自分の方へと寄せた



「…曇…」



何をしているんだ。

と声は出ず、腕一本が白子の方に向いたまま

抱きしめられた


ゆっくりと白子が空気を読んで

その伸びた腕をこちらの方へと戻した



「何があったか知らねえけどな。もう平気だ。俺達がついてる」



ぽんぽん、と頭を叩いて優しく言う曇

最初は何故そんな言葉を吐くのだろうと理解できなかったが

その言葉がじわじわと心に滲む



「…こんな体でも、いいのか」


「お前がいいなら。

俺達は口を挟まねえよ。お前がいたい方でいればいい。

傷があるかないかで俺らはお前を判断しねえからな」



…う。

と言葉が漏れる

大声を出してはいけないと、口を堅く閉じる

でも、怖くなって曇の服をぎゅうと掴む。



「…っ」



過去を明かさずとも、何故か曇は察した

それも勿論嬉しいのだが


体温。


それが一番うれしかった。


思わず、我慢しようとしたのだが

涙が一粒二粒と流れていった。

…36…→←…34…



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明都 - 妖狐、悩んでますね……景光達との再会があるのか、気になるところです。 (2015年2月21日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 手合せは比良裏乱入して来たら私得です…(笑) (2015年2月14日 14時) (レス) id: 30ec80f3f5 (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続き読みました♪景光と妖狐の手合わせ……どちらが強かったんだろう?そして、ほのぼのな感じが良かったです。景光と妖狐達の再会はないのかな?続き楽しみです♪ (2015年2月14日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 餌付けです。簡単についていっちゃいますよ~(笑) (2015年2月8日 0時) (レス) id: 3c3d70d76d (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続きも素敵です♪景光さんに餌付けされたのね(笑)逃げてきたぽこも、可愛かったです!続き楽しみにしてます。 (2015年2月7日 13時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:不雲綺 | 作成日時:2014年9月19日 19時

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