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「ふ…っ」



暑苦しさでまた目が覚めた。

…またあれから眠ったのか…。


のそのそ

と部屋中を見回すと

あのじーさんしかおらず

曇たちは何処にもいなかった



「起きたか」


「…大湖の時」



そう名前を出すと

医者であろうじーさんは意味が分からないという顔をした



「…じーさん、会ったことある」



大湖がおにぎり差し出してきて、怪我してるからと

たった一つの傷の為に、このじーさんを呼んだ

あまり深くかかわると苦しい思いをするような気がして

接触は避けてきたが…。


思い出した


初代の時のことも

自分の体がぼろぼろの理由も。


忘れようとして、無かったことにした記憶

醜くて、無かったことにした傷


ハッとして

袖をめくり、腕を見る


…そこには、村人に襲われた時の傷が多々あった

右目を閉じると

視界が真っ暗になる。



「ずいぶんと前の傷じゃな」


「…ああ」



曇達は…。


そう聞こうとして口を閉じた

同じ曇家の人間でも…

景光の時も、大湖の時も

こんな姿は晒さなかった。

だからあんなふうによく接してくれたんだろう


今の姿を見たら、どうなる。


さぁっと血の気が引き

それと同時に

喉の奥が変な感じがした


ごほっ、と咳きこむと血がべっとりと掛布団についた。



「起きたのか」



襖があくのと一緒に、白子の声がした



「…」


「何をそんな緊張した顔しているんだ?」


「…いや…」


「お茶、飲めそうか」


「…ああ」



布団の傍に置かれた湯呑みを持って

お茶を口に運ぶと

血の味がしていた口内が、すっきりした


…しかし、自分の本当の姿では

湯呑みを持つことさえも難しいのだろうか

どれだけ力をこめようとも、今すぐにでも湯呑が落っこちてしまいそうだった


けれどそんな、暗い雰囲気のようなとき

こちらのお腹が鳴った


白子はそれを聞いて、吹き出すように笑った。



「今、空丸がお粥を作り始めたから」


「…」


「おーう、A起きたかー」


「天火、Aの体拭くから退いて」



部屋に入って、白子の前に堂々と座った曇。

白子がちょっと不満そうな顔をしながら天火を退かすと

濡れた手拭いで



「冷たくても我慢してくれ」



こちらの首をふき始めた



「俺も手伝うか?」


「…丁寧にやらないといけないんだから、天火は駄目」


「俺には丁寧に出来ねえってか」


「天火はAの着替え持ってきてくれ」



…あれ。


と不思議に思う。

…35…→←…3…3



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明都 - 妖狐、悩んでますね……景光達との再会があるのか、気になるところです。 (2015年2月21日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 手合せは比良裏乱入して来たら私得です…(笑) (2015年2月14日 14時) (レス) id: 30ec80f3f5 (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続き読みました♪景光と妖狐の手合わせ……どちらが強かったんだろう?そして、ほのぼのな感じが良かったです。景光と妖狐達の再会はないのかな?続き楽しみです♪ (2015年2月14日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 餌付けです。簡単についていっちゃいますよ~(笑) (2015年2月8日 0時) (レス) id: 3c3d70d76d (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続きも素敵です♪景光さんに餌付けされたのね(笑)逃げてきたぽこも、可愛かったです!続き楽しみにしてます。 (2015年2月7日 13時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:不雲綺 | 作成日時:2014年9月19日 19時

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