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…3…0 ページ32

口から大量の言葉と、音が漏れそうになるが

それを我慢するように、下唇を噛んだ

血が出るほどに、力強く噛んだ


手も、拳を作って

爪が食い込むくらいに力を込めた


壁を睨みつけて、起き上がると

壁に体を叩きつけた



逃げ出した自分が嫌になる

景光の手を取った自分が嫌になる

楽しさを苦しさに変換した自分が嫌になる


他にも嫌に思う点を

一つ一つ丁寧に頭の中にあげていき

そのたびに、苛立ち

部屋の中を散らかした。


自分で自分を苛立たせ

物に当たった。


誰も悪くない。景光も、牡丹も、比良裏も、佐々木も

誰も悪くない

悪いのは自分だけ。


―…自分が妖狐なのを、生きているうちで一番恨んだ。


あの幸せに浸っている自分を恨んだ。


恨んでも変わらないと言うのに

そんな事は自分が一番わかっているつもりだ

しかし

感情というのは自分ではどうしようもないもので

抑えようとするほど、感情が溢れだす

その感情に身を任せても、まだまだ感情が押し寄せる

息が切れて、体が重くなろうとも

口から言葉が、叫びが出ない分

暴れた。

混乱した頭を放って、無我夢中で感情のままに

変な方法で落ち着かせようとした。



色んな音が響く。

破れる音

割れる音

倒れる音


全て破壊される音。




そこから、しばらくの記憶はない




「…は…っはぁ…」



ボサボサの髪を耳にかけながら

我に返ったときには、

帰宅してきたときとは大違いの家の中が視界にうつった。


はー、と息を整えようと

壁に手をつきながら、深呼吸


口端から涎と血が混じった液体が垂れて

目にも流し切ったはずの涙がたまっていた


ずるずると、ゆっくり膝をつき

畳に腰を落とす



「あ゛ー…」



暴れたせいで体のいろんなところが痛む

けれど

そんな事も気にせずに、ぼうっと、一点だけを見つめる

何処を見ているかハッキリしていないが

何処かを見つめていた



その日以降、外出は控えた



誰にも会わないように


誰にも見つからないように


毎日、人が家の前を通るたびに

息を殺して生きた


始めの時期は、曇神社…景光の所へ戻ってしまおうかとも思ったが

やはり心のどこかで、もっと苦しむことになると気付いていたんだろう

その思いも殺して、畳の上で、部屋の隅で、

目を瞑って生きていた


ある日唐突に、しょうもない事が浮かんだ

…3…1→←…2…9



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明都 - 妖狐、悩んでますね……景光達との再会があるのか、気になるところです。 (2015年2月21日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 手合せは比良裏乱入して来たら私得です…(笑) (2015年2月14日 14時) (レス) id: 30ec80f3f5 (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続き読みました♪景光と妖狐の手合わせ……どちらが強かったんだろう?そして、ほのぼのな感じが良かったです。景光と妖狐達の再会はないのかな?続き楽しみです♪ (2015年2月14日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 餌付けです。簡単についていっちゃいますよ~(笑) (2015年2月8日 0時) (レス) id: 3c3d70d76d (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続きも素敵です♪景光さんに餌付けされたのね(笑)逃げてきたぽこも、可愛かったです!続き楽しみにしてます。 (2015年2月7日 13時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:不雲綺 | 作成日時:2014年9月19日 19時

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