マイペース妖狐と曇兄弟の生活。

…１９… ページ21

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「扇子」


「…どこだろうな?」


「おい」



説教が終わったのか、家の中をウロウロしていた自分に

曇がついてきた。

説教が終わったら渡すというのを覚えていたようだ

まあ、流石にあの短い間では忘れんか



「…おや、雨がやむ頃か」



縁側まで行くと、空の様子を見るように足を止め

未だに土砂降りの雨に向けて言葉を吐く。

その時に、曇の扇子もぱたりと開いて

強引にその扇子を押し付けまた歩き出す



「雨止みそう…じゃねえけど」


「…まぁ、後…十分と言ったところか」


「ふぅん」



扇子は返したはずなのに、曇はまだ後ろをついてくる

道が同じなのだろうか

適当にふらふらしている、大人しくない自分とは違って

曇も一応は大人である、部屋ですることでもあるんだろう

…そう思っていたのだが


建物の中を今一度眺めながら歩いて数分

…いまだに曇は自分の背中を眺めていた



「…なんだ」



ずっとついてこられるのは、良い気分ではないと告げながら振り返る。



「んー、いや、暇だからお前についてけばなんかあるかなぁと」


「…何にもないぞ」



しかし、曇は



「お兄ちゃんに隠し事はいけません」



と真剣な顔で、ふざけた声を出した。



「この間も、言ったが…自分は妹でも弟でもない」


「はいはい」


「それに、隠し事などあるわけないだろう」



当たり前のように、いつもの調子で言う。

曇は頭を掻きながら唸った



「うーん、一筋縄じゃ行かねえかぁ」



…こちらは、隠し事でもしているように見えるのだろうか。

そんな気は全くないのだが。



「…曇、雨が止んだら町へ行ってみたいのだが」


「町ぃ?」



家で常にごろごろしている曇は面倒なのか

少々嫌そうな声を上げた



「この間、三男に連れて行ってもらったばかりだが…あいつは何というか…」



騒がしい。

そこまで声が出ずに、少し考えるそぶりを見せる



「…曇、お前も騒がしい奴だったな」


「騒がしいじゃなくて、元気っていう言い方のがいいんだけど」


「…他に適任がいそうだな」


「な…っ！お兄様より適任なんていねえぞ!!」



ほれ見ろ、もう騒がしいじゃないか。

そう思いつつ、ぷす、と笑う



「何なら今から行くか?」


「次男に怒られるだろう」


「空丸ってば怒りん坊ねー」



二人でニヤニヤしながら、そんな会話をしていると

盗み聞きでもしていたのか



「雨、止んでからな」



次男が、姿も見せずにそう言った。

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