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…17… ページ19

「兄貴は本当調子に乗るからな…」



食事をする部屋に戻ると



「白子さんも我慢してくれるのに…」



次男は疲れ切ったかのように言った



「…」



次男のため息を最後に、沈黙が訪れた


別に沈黙は苦手ではないので、自分も黙る

…とその沈黙が落ち着かないのか

きょろきょろしていた三男が声を上げ



「あっゲロ吉…」



一匹の狸がこちらに寄った

この狸…見覚えが…



「―――久しぶり、ぽこ」



無意識に口から漏れた言葉に、二男と三男もだが

自分もきょとんとした

――ぽこ。

どこで聞いただろうか?


首を傾げると、狸も…ぽこも首を傾げた。



「ぽ、こ…?」


「…気にするな、ちょっと浮かんだから呼んだだけだ」


「ゲロ吉は、ぽこじゃないっす!!ゲロ吉って名前ッす!!」



必死に守るように、狸を抱きしめる姿

…なんか



「…そうだな」



その姿に、笑みがこぼれる

でもなんとなく

悲しいと言うか、変な気分



「ぅわぁ、Aさんってそんな風に笑うんすね…!」



…曇と同じことを…。

そんなに、笑っていないのだろうか



「自分では、分からないのだが」


「え…あぁ、なんか…ふわっと…?」


「…ふわ?」


「なんていうんすかね…なんか優しい笑顔っす!!」



優しい…。


その言葉に、少し心が温かくなるような感覚がした

嬉しいとか、そう言う感情なのか

きっとそうだろう

根拠とか、よく分からないがそう思った



「…ありがとう?」


「えっ聞かれても困るッす」


「A…お礼を疑問にしてどうすんだよ…」



あっているのだろうか

その不安が出たんだろう

自分は口を閉じて、もう一度開く



「ありがとう」


「さっきの笑顔で言ってほしいっす!!無表情じゃなくて!!」



声をあげながら、こちらの体を揺する姿は

曇そっくりだ。

やはり、兄弟なんだな…。


そう考えたときに



「あぁ、もう…兄貴たち…」



耳にした大きな音

どんっと壁に叩きつけられるような低い音に

何かが破れるような音。

まだ、枕投げという名の喧嘩でもしているのだろうか

…いつの間にこんな大きな音になっていたのだろう



「そろそろ行くか…」



面倒くさそうに、嫌々立ち上がる次男を見て



「…自分が行こう」



声を出した。



「え…いや、いいよ。俺が…」


「次男は休んでてくれ」



ワザとらしい笑顔をがんばって作って



「ところで―――」



浮かんだことをまた口にする



「縄はあるか?」

…18…→←…16…



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明都 - 妖狐、悩んでますね……景光達との再会があるのか、気になるところです。 (2015年2月21日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 手合せは比良裏乱入して来たら私得です…(笑) (2015年2月14日 14時) (レス) id: 30ec80f3f5 (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続き読みました♪景光と妖狐の手合わせ……どちらが強かったんだろう?そして、ほのぼのな感じが良かったです。景光と妖狐達の再会はないのかな?続き楽しみです♪ (2015年2月14日 14時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - 明都さん» 餌付けです。簡単についていっちゃいますよ~(笑) (2015年2月8日 0時) (レス) id: 3c3d70d76d (このIDを非表示/違反報告)
明都 - 続きも素敵です♪景光さんに餌付けされたのね(笑)逃げてきたぽこも、可愛かったです!続き楽しみにしてます。 (2015年2月7日 13時) (レス) id: 5d47ba764e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:不雲綺 | 作成日時:2014年9月19日 19時

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