マイペース妖狐と曇兄弟の生活。

…１４… ページ16

背中だけ、肌が見えている状態

…次男は顔を歪ませる



「…傷?」


「傷だらけだぞ」


「…」



自分では見えない場所、背中に傷があるらしいので

見ようと思っても見れない


その時、ばさっと服が地面に叩きつけられる



「…っ」



そして息をのむ。

…傷は、背中だけじゃない

腹部や胸部にもあった



「A…？」



見るに堪えない傷。

それを見て、すぐに頭に浮かんだ言葉。


――隠せ


腹部の肌に触れながら、一つの傷をなぞりながら

隠せと何度も心の中で唱える

そして静かに言う

心なしか、体中の傷が薄くなっていく



「…気にするな。それから次男、服をすべて脱ぐんだが出てかなくてもいいのか」


「ちょ、ま…っお前恥じらいってものが…！で、出てくから待て！」



慌てながらこの場を後にする次男の背中を見送るなり

なんでもない。

そう口だけ動かした



「ぁ」



ハッとして、左目に手を添える

まばたきをしたり、手で視界を隠したりと

色々な事をして安心する


…良かった。ある。見える。


…しかし、いきなり自分はどうしたのだろう。

左目…夢…？

夢で見たのは、夢でくり抜かれたのはどちらの目だ…。

そうぼうっとしながら、下の服を脱ぐ。



「ぅ…っ」



しかし、そこでもまた見るに堪えないものを目にする

火傷と、傷だらけの両足…



「ぅ、え…」



瞬間、視界に違和感を感じる

ハッキリとは言えないけど

その視界には

腕の茶色くにじんだ傷や、真っ赤な線の傷、火傷が目に映る

そして、だんだんと体中が痛んでくる

目を見開いて、手を裏返して

汚い手のひらや甲に吐き気を抱く

割れた爪、白い肌に浮かぶように見える血管、傷


ぐらぐらと眩暈がする



「…っは…！」



転がるように浴槽の元へと走る

走ると言っても、それほど距離はない


けれど、足に激痛が走り

浴槽にもたれる形で転んだ


目に映るのは、醜い姿

耳や尻尾、それらも黒く灰をかぶっている


隠せ

隠せ隠せ隠せ消えろ消えろ消えろ

誰にも見せるな

こんなの自分ではない



「戻ってくれ…」



小さな声で、弱々しく呟く

念力でも行うかのように目を瞑って歯を食いしばる



「…ぅ、は」



もう一度目を開くと、視界は元通り

体も白い肌で、傷はない

爪も割れていないし…耳や尻尾も灰をかぶっていない



「…」



そして自分は、何事も無かったかのように立ち上がり

汗をかいた体に湯をかけた。

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