マイペース妖狐と曇兄弟の生活。

…１１… ページ13

血流表現あり。(ぐろってほどではないかもですけど一応注意)

――


すると

変な夢を見た。

夢を見たという事は寝たのだろう


…これは本当に夢なのだろうか。

色鮮やかで、声や音もはっきり聞こえて、こちらの恐怖のような感情もはっきりあって

疑いたくなるほど、現実味があった


提灯の明かりがこちらに近づく

がさがさと、荒々しく草をかき分けながら

誰かがこちらに近づく

…自分は、それに怯えて逃げていた

体中はもうボロボロで、刃物で傷つけられた傷や

松明で燃やされ、やけどを負っている場所もあった

…左目は、くり抜かれていて…もう無かった。


息を荒くして逃げて、逃げて逃げて、逃げまくった先

自分の家であった場所にたどり着いたのだろう、多少の安堵の気持ちがあった

しかし、その家は松明を投げられ目の前で燃やされた


驚きのあまり、マヌケな顔をする自分

そんな自分の髪を誰かが引っ張り、地面に叩きつけた


痛さに声を出す間もなく、こちらは囲まれた

…刃物が月の光で怪しく光った

それで、それで


真っ赤な血が、飛び散って

地面に流れて

葉について

石について


ああ、ああ



「ッぅあ…っ」



そこで目が覚めた


思い出すと変な夢だ

妙に懐かしい感じがして…余計に変な気分になる


額や手に汗をにじませながら

片腕を額に乗せる



「…っは…はぁ…っ」



寝れば治る

…なにがだ

全く治らない

むしろ、同じような夢まで見て悪化した



「うぐぅ…」



頭が痛い

もう一度寝ようか

いや、それでまた同じような夢を見たら最悪だ

しかし

ずっとこんな変な気分でいるのも嫌だ

どうしようか


両目をパッチリ開いて、曇天の空を見る


その光景が、自分の心と似て見えた。

振っている雨が涙のよう。

―――おっかしい。

曇天は曇天でも、空は雲をかき分ければ

上へ上へあがれば太陽が見えるではないか


自分の心とは大違い。



「…曇天…」



ああ、曇。

今から神社に帰ろうか

あの兄弟たちを見れば心も晴れるかもしれない


…晴れればいいけど。


しかし今はなんとなく

アイツ等に

…人間に会う気分ではない


…アイツらのあの笑顔が

とても憎く感じてしまう

らしくない

それに

何の罪もない人を…


泥まみれになった服。

次男に見られたら怒られるだろうか



「…」



小さく一人悲しく笑った。

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