１２１.カメラの向こう ページ36
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｢あ…、恭弥君。どうかしたの？｣
冷や汗が背中を伝うのを感じながら、さりげなく耳にしていたイヤホンを取り、パソコンと共に自分の体の後ろへ。
｢Aの部屋から何やら音と声が聞こえてね。何かやってると思って……確認だよ｣
｢え…と。音と声…出してたかな？｣
｢どっちも結構小さいものだったけど、僕はAの声だけはわかるんだよね。何してたの？｣
襖を開けて音もなく畳の上を歩き、私に近づいてくる恭弥君。後ずさろうにも、私の後ろには半分閉じた状態のパソコンが置いてある。
｢な…何もしてないかな…｣
｢そう言う嘘は僕の目を見れるようになってからついたら？｣
ほら、見つけた。と私の後ろにあったパソコンを持ち上げた恭弥君。
いまここで並中でリング争奪戦の対戦をやってるなんてバレたら大変なことになる。
なにか良い言い訳を、そうだ。
｢今日の天気予報が雷雨だったでしょ？並中が心配で、少しの間だけ様子観てたの｣
｢ああ。そういえば久しぶりか…｣
｢それに、今日はとびきり大きい雷が近くで鳴ってたから、さすがにね｣
｢ふぅん。で、どうだったの？｣
言った途端にパソコンを開いてキーを押し、映像を出してしまう恭弥君。
映像を出してしまう！？
｢ダメ｣
｢わ、｣
パソコンに手を伸ばして立ち上がろうとするも、おでこを軽く押され、突然の衝撃に抵抗無く座り込んでしまう。
｢い、たくない｣
｢そりゃそうでしょ、手加減してるんだから。見たら返すから大人しくしててよ｣
手加減して押された痛くないおでこを片手で庇いつつ、恭弥君の表情を密かに見上げる。
｢……｣
恭弥君は無言で、眉一つ動かさずに映像を切り換えていく。
そこはまだ避雷針がある屋上の映像やボロボロの校舎内を映した状態のまま。
確実にバレた。絶対に終わった。
せめて人はいなくなってますように。
｢特に問題無さそうだね｣
｢へ？……そう、だね？｣
紡がれる言葉に怒っている様子は無くて、表情の変化も無かった。
どういうこと？校舎の窓ガラスは割れているし、屋上の巨大な避雷針が倒れてる。恭弥君がそれを見逃すなんて…あり得ないのに。
困惑する思考を押さえ込んで、返事をした。
｢安心して思わず声が出たの？｣
｢うん、そうかも。ありがとう……っ！？｣
恭弥君に返してもらったパソコン内の映像を見て絶句する。恭弥君が隣にいるので、上げそうになった声をなんとか飲み込んだ。
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作者名：月夜に猫が一番！ | 作成日時：2020年4月20日 17時
