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恭弥君を座らせて、目の前に屈む。これでラルさんと跳ね馬を恭弥君の視界から隠す。
｢顔にまで傷作って…｣
｢かすり傷だよ、こんなの｣
｢前もそんなこと言ってなかった？｣
｢忘れたよ。…そんなことより、それいつの？｣
そして素早く、セーラー服の上に着ていたカーディガンから、仕舞っていた消毒薬等を膝の上に出していく。
その様子を見ていた恭弥君は、私の白いカーディガンを指差して呟いた。
｢これ？いつのだったかな…。あー、私が保健委員と風紀委員を兼任してた時に恭弥君がくれたんだよ。ほら、白衣は通気性が悪くて重いからって、議題に出したときの…｣
並盛中の保健委員には、見た目で分かりやすい白衣の着用が年間を通して義務づけられていた。保温性が良くて冬は着ていて温かい。けれど、夏は着たまま移動すると暑い。という問題点が前々からあがっていたのにも関わらず。
各々で対策はしていたようだが、通気性が悪くて重い。そして動きにくい。夏は最悪の三拍子が揃って、保健委員の方で熱中症が多発していたのは事実。だから、委員会の議題に出したことがあったのだ。その年度から夏の白衣着用は義務では無くなった。…という話がある。
あの後恭弥君に、並中指定の紺色の他に、無地の白と黒、灰色のカーディガン３着を貰ったのである。
閑話休題
｢あの後か｣
｢そうだよー。ポケットが多くて便利だし、恭弥君から貰った物だから、毎日大切に使わせて頂いてます。…はい。染みるよー｣
｢っ！｣
消毒薬を含ませたコットンで、恭弥君の顔の血を拭っていく。顔の筋肉がピクピク動くけど、流石恭弥君。痛そうなのに声は出さない。
私はそれからと言うもの、年中包帯やガーゼ、消毒薬なんかをカーディガンに入れて持ち歩いていたのに。骸君の一件では、残暑で暑かったのと、夜の見回りだから怪我人はでないだろうという理由で着なかった。
あの時は、寒かったし骸君に連れていかれるし道具は無いしで、散々後悔したんだ。
これからはどんなことが有ろうと、カーディガンを着る(手当て道具を持つ)ことにしている。
今思えば、私は恭弥君に貰ってばかりだな…住む場所も着る服も、食べる物だって…。その代わりに炊事洗濯掃除はやってるけど…足りない気がする…。ダメだ…クヨクヨ考えてしまう。
｢ガーゼで良いかな…よし。次は、腕｣
そんな考えを頭から追い出しつつ、恭弥君の手当てに没頭する。
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作者名：月夜に猫が一番！ | 作成日時：2020年4月20日 17時
