１０２.屋上での一幕 ページ17
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私の目の前で起こっていることを説明しよう。
ここは、いつもなら、爽やかな風がそよぐ穏やかな空気の屋上であった。しかし今は、とても殺伐とした空気が流れている。
屋上の鉄筋コンクリートは所々破壊され、見る影もないほどボロボロで、破壊の限りが尽くされていた。
白を主とした屋上の色合い。それは今や、血が至る所に飛び散っており、酸化して赤茶色がこびりついているようだ。
そして極めつけは、屋上中央に立ち尽くしている跳ね馬と恭弥君のことだろうか。彼らは身体中血塗れにして、今でも真新しい傷を作っては、血を滴らせているではないか。
見ていてとても痛々しいのである。
――こんな傷だらけの恭弥君に、リング争奪戦の会場は此処だと言ってしまったら、全員咬み殺すために無茶をするかもしれない。だから恭弥君には悪いけど、秘密にさせてもらうね。
｢お、おい恭弥、ちょっ、休憩しねーか？｣
｢は？やだよ｣
跳ね馬が息絶え絶えで提案するも、恭弥君はとりつく島も無い。それは、さすがに可哀想に思えてきた。
｢…ラルさん、相談した作戦通りにお願いしますね｣
｢オレを使うなんて…。わかった。やれば良いんだろやれば｣
｢ありがとうございます。お礼はちゃんとしますから｣
｢絶対だからな｣
ラルさんと小声で会話をする。
私がラルさんにした相談内容はこうだ。
まず私が恭弥君の気を引き、意識を完全にこちらに向けておく。
次に、ラルさんが跳ね馬に近づき、リング争奪戦の場所を並盛中学校だと伝える。(恭弥君が並中の校舎を壊されると怒る。ということを跳ね馬が知らなかった場合、それも伝えてもらう)
最後に、私が屋上の修復を理由に跳ね馬と恭弥君へ、闘う場所の移動をやんわりと提案する。作戦は簡潔だ。
リング争奪戦の場所を、恭弥君の闘う出番が来るまで恭弥君に悟られないこと。
これが絶対条件である。
ラルさんへのお礼は、私の手作りケーキで手を打ってくれた。
そして、密かにアイコンタクトをとると、頷いてくれた。
｢恭弥君！…手当てしないと、思うように体が動かなくなっちゃうよ？｣
｢…………わかった｣
｢お前って奴は…！Aの言うことだけは聞くのかよ！｣
私が呼び掛けると、恭弥君は攻撃の手をピタリと止め、少しの間考えてから頷き、フラフラと私の方へ歩いてきてくれた。作戦の通りだ。
それが気にくわなかった跳ね馬は、あれだけ血を流してもまだ血気盛んなのか、座り込んでも騒いでいる。
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作者名：月夜に猫が一番！ | 作成日時：2020年4月20日 17時
