標的87 ページ42
NOside
「･･･それ、本気で言ってるの」
「はい、もちろん本気です」
若干不機嫌な雲雀と、真面目な顔をした風香は風紀財団アジトのとある一室で向かい合っていた。
「『風セキレイの匣を返して欲しい』って･･･」
はぁ、と溜息を吐きながら、雲雀は片手で額を押さえる。
そして軽く頭を振ると風香の目を見据えた。
「･･･悪いけど、聞けないな。
理由は君もわかってるでしょ」
その鋭い視線にも怯まず、風香は雲雀を見つめ返す。
「この“作戦”はツナの超直感で裏打ちされていると言えど、かなり危険なもの。
だから、私にも手伝わせてください」
もう何も、失いたくないんです。
風香は、そう言った。
その瞳に灯るのは、美しく儚い、淡い水色の炎。
時折彼女の瞳に灯るそれは、彼女の覚悟が強いことを示す。
そのことを知る雲雀には、もう止める術など無かった。
第一、覚悟を固めた彼女を止めることなど、雲雀には不可能なのだ。
何故なら、彼は10年以上前からずっと、惹かれ続けているのだから。
彼女の瞳が宿す、淡い水色の炎に。
#####
10年後雲雀side
迷い込んで来た獄寺隼人の猫を持ち主に返してから、アジトに帰る。
物音を立てないようにそっと布団に潜り込むと、華奢な指が僕の寝間着の袖を掴んだ。
「ん･･･」
小さな声を上げながら擦り寄ってくる彼女を、愛しさのあまり思わず抱き締めた。
僕は、10年前の風香には手を出せないし、出すつもりもない。
もちろん、この想いを伝えることもしない。
風香との仲をどうするのかは、過去の僕が決めることだ。
でも、これだけは知っていて。
どんな時代でも、どんな状況でも･･･君を一番に想っているのは、きっと僕だと。
「───愛してる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水鏡 | 作成日時：2018年10月25日 9時
