標的79 ページ33
この人は優しい。優しすぎる。
でも、その優しさに甘えたらダメなんだって、なんとなくだけどわかった。
オレが、オレ達が甘えたら･･･風香さんはそれに応えようとして、そしていつか、壊れてしまう。
それも怖いけど、今は『人を殺す』ことへの恐怖の方が勝るから。
オレは甘えることを選んだ。
心の奥底から聞こえる『その選択は間違ってる』という声を、聞こえないフリをして。
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風香side
ツナが修業の様子を見に来てから少しして、私達はブリーフィングルームに集っていた。
今この部屋にいるのは私とツナ、獄寺、山本にリボーンと、この時代の笹川、フゥ太、ビアンキ姐さん。
私達と同じように過去から来たクロームは･･･今ここにはいない。
今彼女が置かれている状況を考えて、机の上に置いた拳を指先が白くなるほど握り締める。
骸が補い、彼女の命を繋いでいるはずの内臓。
それが、消えた。
それ即ち骸に何かが起こり、幻覚を構築できない状況に追い込まれたことと、
クロームの命が風前の灯火となったことを示す、絶望的な報せだった。
誰も何も言わず、時計の針が時を刻む音だけが響く部屋に入って来た草壁さんが、口を開いた。
「クローム髑髏は一命を取り止めました」
「本当!? 良かったー!!」
ツナの歓喜の声に、張り詰めていた空気が緩む。
私がふぅと息を深く吐いてから顔を上げると、リボーンは私に向かってニッと笑ったあとで草壁さんに尋ねた。
「どーやってあの状態から持ち直したんだ?」
「ボンゴレリングです」
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年10月25日 9時
