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風香side
泣くんじゃない、しっかりしろ私。
家族のことを思い出した時、いつも心の中で唱えていた言葉。
本当は寂しくて悲しくて、壊れそうな心を何回も誤魔化していたその言葉も、何故か今は効果を発揮しない。
一人で風紀財団側のアジトにある自分の部屋に戻って、とりあえず浴衣に着替えた。
この時代の私が使ってたもののはずなのに今の私が着れるってことは、あと5年経っても身長がそんなに変わらないってことなんだけど･･･考えるの止めよう。
ベッドに寝っ転がって気持ちを落ち着ける。
「はぁ･･･」
バカみたい。
突然10年後に飛ばされて、不安なのはツナだって同じ。
だから私はみんなを余計に不安がらせるような態度は取らないって、決めたはずなのに。
そのまましばらくぼーっとしていたら、突然の襖を開ける音。
･･･あ。忘れてた。
何をかと言うと、この部屋には二方向しか壁がないってこと。
残りは襖で、一方は廊下に面してる。もう一方は恭弥さんの部屋に繋がっている。
で、今音がしたのは恭弥さんの部屋と繋がっている方。
「何してるの」
「恭弥、さん･･･」
ええそうですよね、そっちの襖を開けて来るのは恭弥さんだけですよね。
「良い加減にさん付け止めてほしいんだけど」
そう言いながら恭弥さんはベッドにぽすっと腰を下ろした。
苦情はリボーンやディーノのお陰で培ったスルースキルでスルーさせてもらう。
私も起き上がり、少し間を開けて同じように座った。
「･･･ねぇ、いつまでそんな風に生きてくつもり?」
「え･･･」
唐突にそんなことを言った恭弥さんに目を見張ると、これまた唐突に抱き寄せられた。
「な、何の話をして･･･」
「惚けないでくれる?」
まるで肉食獣のような鋭い視線に射竦められて、抗えないと悟った。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年10月25日 9時
