標的28 ページ31
風香side
「おじいちゃま･･･ごめんなさい」
並盛にある廃病院の病室。
未だ目覚めない9代目の枕元に置かれたパイプ椅子に座った私は、もう何年も呼んでいなかった呼び方で9代目に謝った。
窓から見える景色が、私にそれとなく現在時刻を教えている。
もう夜も明けてきた。
明晩には全ての決着が着く。
でも、私は『影』。
共に戦いたくとも、それが出来ない。
「･･･私が、ただの『風』だったら･･･」
何か、変わっていたのだろうか。
ぽつりと呟いた言葉のリアリティの無さに、自嘲した。
そんなこと、有り得ない、と。
私達は、ボンゴレの『風』であり『影』なのだから。
父も祖父も、曽祖父も･･･。
私達ヴェートラ一族とは、ボンゴレという光を守るなくてはならない、けれどそれ故に影の中を生き続けることを
「それで、良いじゃないか･･･」
「! 9代目、」
「･･･風香ちゃん、君は、護りたいんだろう? 今度こそ、守り抜きたいんだろう?」
目覚めた9代目に言われても、私は応じることが出来ない。
そんな私に構わず、9代目は続けてこう言った。
「風香ちゃん。君が綱吉君達の側に居たいと･･･ただの『風』でいたいと言うんなら･･･私はそれで良いと思っているんだよ･･･。
君は、風のボンゴレリングを持つ者は･･･『風の守護者』だ」
「･･･それじゃ、私は･･･」
「君は今この時から、“ボンゴレ風の守護者”だ。
そして、君の主は私ではなく、“大空のリング”を持つ者･･･。
───君なら知っているだろう。
そこまで言われれば、私にはわかる。だって私も8年前のあの場にいたんだから。
私は椅子から立ち上がり、床に片膝をつく。
「わかりました、9代目。
私はこれよりボンゴレ風の守護者として行動します」
自分では確認しようがないけれど、その時確かに、私の瞳は薄青の炎を灯していた。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年8月13日 10時
