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「ああ、一つ言い忘れていました」
わざとらしいチェルベッロの言い方に、その場にいるヴァリアー以外の面子は解きかけていた警戒を再び強める。
「疾風様、幾ら貴女様が“風のボンゴレリング”を持つといえど、そのリングが『ボンゴレの影』の持つものと定められている以上、このボンゴレリング争奪戦において貴女様は門外漢です」
風のボンゴレリングという今まで話にすら上がってこなかったリングの存在に全員が驚き硬直する中、これでもかと言うくらいはっきりとした拒絶に、名指しされた疾風･･･もとい風香は嘆息する。
「少しでも日の当たる場所に、私の居場所はないのか･･･」
わかり切ったことだが、と返す風香にチェルベッロは一礼し、ヴァリアーと共に消えていった。
「消えた･･･あの女達もだ･･･!」
「遅かったか!!」
「遅すぎだって、アホ馬･･･」
部下を引き連れ現れた兄弟子に、風香は周囲に聞こえない音量で洩らす。
そんな妹弟子の声が聞こえていたはずもないが、ディーノは部下に9代目や怪我人を運ぶよう指示し、彼らがいる方へと歩いてきた。
「門外顧問チームから連絡を受けた･･･まさか･･･こんなことが･･･」
「オレ達の受けたダメージは余りにもデカイ･･･でもな･･･」
「なあ、小僧」
「なんだ、山本」
「あの黒マントの奴、誰なのな?」
指差されているのはリボーンやディーノ以外正体を知らない風香。
「･･･あいつは疾風。『ボンゴレの影』たる風の守護者だ」
「それよりも、なんなんだよ“風のボンゴレリング”って! そんなのがあるなんて、一言も言ってなかったじゃないか!!」
そのツナの叫びは、今その場にいる全員の思いを代弁していた。
「リボーンを責めるな、沢田綱吉。
風のボンゴレリングとそれを持つ『風の守護者』の存在は本来はボスしか知り得ない。お前達に知らされなくて当然だ。
それから、そこの嵐の守護者が心配しているようなことにはならない。私は大空のボンゴレリングを持つ者に忠誠を誓う。
よってXANXUSに肩入れするようなことは無い」
ただ、と風香は言葉を続ける。
「沢田家光から頼まれていたにも関わらず、このような事態になってしまった。
───すまない」
そう言って立ち去ったその背を、ツナは思わず目で追っていた。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年8月13日 10時
