標的17 ページ20
骸side
「･･･どうやら貴女は、僕とは考え方が違う人種のようですね」
彼女は僕と似ている。
だから僕は自分が体験した地獄のような日々を、彼女に見せた。
けれど、同時に僕と君は決定的に違う。
限りなく近いはずなのに、限りなく遠い。
僕とは一生相容れないだろう。
そう思い、ふと言葉を洩らした次の瞬間、彼女は僕の目の前に立っていた。
「･･･なんですか?」
何処か飄々とした、穏やかな光を灯していた瞳は、今は真剣そうに細められている。
「･･････」
彼女は徐に両手を上げ、グーを作るとそのまま僕のこめかみを抉り始めた。
「!? イタタ･･･!!?」
あまりの痛さに悲鳴を上げると、
「バカじゃない」
落ち着き払って紡がれる言葉は、僕だけに向けられたもの。
「確かに、私と貴方は同じじゃない。だってこの世に“同じ人”なんて存在しないんだから」
「･･･まあ、確かに」
その意見に僕は頷き、僕を言い包められたことに満足したのか、彼女はフッと笑う。
その足元にひっそりと咲く青紫の花に、少しばかり“仕返し”をしようかと思った僕は三叉槍を出し、柄で地面を突く。
あっという間に彼女の体に蔓が絡みつき、自由を奪う。
「･･･これは、どういう･･･」
「もちろん、先程のお返しです」
ところで、と僕は桔梗の花を見せる。
「貴女、この花のブローチしてましたよね?」
「え、うん･･･」
いきなり話が変な方向に行ったことに戸惑いながら、彼女は頷いた。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年8月13日 10時
