標的16 ページ19
今目の前にいる“彼”は、現在牢獄で身動きの取れない状況に置かれているはず。
そして、その彼が自由に動ける世界･･･答えは案外簡単に出た。
「一体どうしてここに? ･･･というかまずここに何処かわかっているんですか?」
「貴方がいるってことで、なんとか」
ほお、と感心したように細めて目を開くあいつ。
どうやらそういう嫌味なところは変わっていないらしかった。
「ここは私の精神世界。そうでしょ、“六道骸”」
静かに私が言えば、骸はあからさまに驚いた。
「･･･どうして、僕の名を?」
「貴方が思ってた通り、私が“マフィア”だから」
きっぱりと言う。誰であろうと欺き続けるのは気が進まないから。
「･･･やはり、ですか。
それにしても、わざわざ言うとは･･･貴女、変わってますね」
「よく言われる」
ふふふ、クフフ、と二人で笑い合う。
少し前なら、考えられなかった光景。
原因としては骸の変化が大きなところなんだろうと思う。
「ところで」
「? ･･･ああ、アレのことですか」
「･･･どうして、私に見せようとしたの?」
「通じるモノを感じたからですよ」
僕と、貴女の間にね。
そう言われて、心臓を鷲掴みにされたようだった。
「･･･確かに、私もマフィアに全てを奪われた。そこは当たってる」
思い出して、頭上に目を走らせた。
目に映るのは、今は思い出の中だけに存在する、崩れ去った城。
「なら、何故」
「でも、彼らに復讐しようとは思わない」
確かに、何度「マフィアなんてなければ」と思ったかしれない。
何度この運命を呪ったかしれない。
「護りたいものを全て失った私が、また護りたいと思ったのも･･･彼らだから」
私のことを、“ファミリー”と受け入れてくれる人がいる。
私のことを、“妹分”と可愛がってくれる人がいる。
私のことを、“生徒”と言ってくれる人がいる。
そして･･･私のことを“好敵手”と認めてくれる人がいる。
そんな“彼ら”を護りたくて、私は強くなろうと決めた。
もう何も、奪われたくないから。
もう何も、失いたくないから。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年8月13日 10時
