標的9 ページ12
ふっと、暗闇から意識が浮上した。
ひび割れた灰色の壁に、ボロいソファ。
自分の体を見れば、足首に鎖を巻かれ、手も後ろに回して縛られていた。
今のところ周りに人はいないようで、それなら脱出も可能、と手の拘束を緩めようとした瞬間、コツ、コツ･･･と規則正しい足音が聞こえた。
目を閉じ、意識の無いフリをする。
ギイィ、と音がしたあと、足音が止まる。
人の気配がするのは私の真ん前。
視線が自分に向けられているのがわかる。
視線の主は無言で私の顎を持ち上げた。
「･･･もう目が覚めているんじゃないですか?」
クフフ、と笑いながら言われ、打つ手が無い私は素直に瞼を開ける。
そっと開けた目に飛び込んできたのは紅と青の瞳に藍色の髪の少年の顔。
思った以上に近い距離に怯みかける心を保ち、彼──恐らく六道骸──の瞳を静かに見つめる。
しばしの間続いた沈黙を破ったのは、六道骸の方だった。
「･･･ボンゴレ10代目について、何か知っていますか?」
そう言われて･･･なんで歯が抜かれていたのか、なんで犠牲者の名前に聞き覚えがあったのか、全てがわかった。
今私の目の前にいる脱獄囚は、理由はわからないもののボンゴレ10代目を狙ってる。
でも、この様子だとそれが誰かまだわかっていないんだろう。
それでフゥ太を操り、並中ケンカランキングを手に入れた。
そしてボンゴレ10代目らしきケンカの強い奴を順に狙った･･･。
それが、この事件の顛末。
「･･･そんな人、私は知らない。それよりも、貴方がこの事件の首謀者?」
そう返しつつ、持てる記憶力を総動員して『並中ケンカの強さランキング』の詳細を思い出そうと集中する。
確か･･･五位・笹川了平、四位・草壁哲矢だったはず。
三位は獄寺隼人、二位は山本武。
そして･･･一位・雲雀恭弥、風間風香。
それを思い出した途端、自分が今ここに拘束されている理由に思い至った。
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作者名：水鏡 | 作成日時：2018年8月13日 10時
