【らっだぁ】嫌いなお隣さん

１４　らっだぁ目線 ページ15

ああ、また部屋が散らかってしまった
いっつもこうなんだ
きょーさんが来るとお菓子が全部無くなるし、緑君が来たらわざと部屋を荒らしてくる

「そう言えば、小林さんと初めて会った時も散らかってたっけ」

確か、そのせいで俺の第一印象が悪くなったんだ
…同じ運営の仲間でも殺意がわいてくる

出てきたごみを全部まとめて、ゴミ出しのため外に出る
流石に夏なだけあって、夜でも暑い
いつもつけるようにしていたニット帽を脱いで、ゴミ収集所に向かう

ゴミを全部出し終わって、部屋に戻ろうとすると、誰かの声が聞こえる
透き通るような、綺麗な女の人の声
前にもあったような感覚に、口を大きく開きながら、声の元へと向かう

小林さんだ。小林A
もう夜だというのに、何を突っ立っているのだろうと声を掛けようとしたが、直前でやめる
泣いていたのだ、彼女が
何が起こったか分からないが、ここで突然話しかけるといけないのは俺でも分かる
少し、様子を見てみるか

『母さん…ここ…れない…』

少しだけ、聞き取れた言葉
その後も何度か、母さん母さんと呟き続ける彼女を見て、母親に何かあったのかと推測する
普通なら、彼女自身に何かあったと推測するけど
彼女に限って、自分の事で泣くようには思えなかったのだ
まだ出会って間もないが、何となくそんな気がする

「あれぇ…もしかして小林…さん？何してんの？」

白々しく言う
人狼のやりすぎで嘘を吐くのが上手くなっちゃったかな、なんていらない心配をする
小林さんは涙を拭きとったのか、いつもの偉そうな態度に戻る
しかし少しだけ、引き目に口を開いた

『迷子…』

目を大きく見開く
迷子？ここはアパートの裏側だぞ？
引っ越してきて間もないから、ここら辺の地理に詳しくないのは分かるが、アパートの裏側で迷子後になるだなんて聞いたこともない

必死に笑いをこらえて、小林さんにここがどこかを教える
すると彼女は、一瞬で顔を赤らめて、どうしようかどうしようかと慌て始めた
その光景があまりにも面白く、思わず顔がニヤけてしまう

「もう夜おせーぞ。学生は早よ帰れ」

『分かってるよ』。吐き捨てるように言って小林さんは自分の部屋へと向かう
せっかく人が親切に言ってやったのに…本当に偉そうなやつだ
俺もそろそろ帰ろうと歩き始めた時、彼女の足がぴたりと止まる
どうしたんだと言おうとした瞬間、彼女は恐る恐るこちらを振り返る

『鍵がない…』

本当に、彼女のバカっぷりには驚かされる

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