天神屋の灯守 二

◆64（葵視点） ページ23

(葵視点)

「Aさん、コレ、そのうち私も借りることができるかしら？」

「え？」

「知ってるお料理も結構あるから、よかったら夕がおのメニューの参考にしたいの」


夕がおでは限定で出す料理もあるし、時々なら挑戦的な味も出せる場所になっている。

今までは自分の記憶を頼りにしていたから、レパートリーが偏っていた可能性はあるし、
お店を預かっている身としては凝った料理ももっと挑戦してみたい。

それにはこのAさんの作っている資料は私にとってまたとない刺激になる。


「そりゃあ、白夜と大旦那様が目を通したら倉庫行きの資料だろうから、
葵が見たければいつでも見られるようにはできるけれど…」

「ホント！？」

「そんなに気に入ったのかい？」


勿論！と力説すれば笑われたけど、「じゃあ提出する時に白夜にはそう言っておくよ」と色良い返事を貰えた。

やった！とガッツポーズをしていると、ふと隣のお涼がジト目でこちらを見ていた。

Aさんの気前の良さに甘えて色々とねだってしまったけれど、本来ここに来た目的はお見舞いのためなのよね。

少しはしゃぎすぎたかな。

でもお涼、その目はともかく。

今口元に運んでいるそれは私の持ってきた梨と、Aさんが出してくれたお茶菓子だと記憶してるんだけど。

人のこと言える？？

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