偽りの家族との夢話

29話 ページ32

A視点


｢帰ろっかぁ、終わったよ！姉ちゃんっ｣





黒の明るい声が毛布の向こうで聞こえた。









どれくらい経っただろうか。とても長い時間だった…




私は黒に抱えられ、気付いたら家に帰って来ていた。



安心する、優しいラベンダーの香りの家だ…




ぽす、とソファにゆっくり置かれる。






｢こ、こわかったよぅ…っ、くろ…ﾋｸﾞｯ”｣








そう言い、黒に抱き着いた。…とにかく、こわかった…



まだ震えが止まらない、




情けない、私はこの子の姉なのに……



｢大丈夫、もう大丈夫だよ…姉さん｣


そう言い、黒は私の頭を撫でくれた。聖とは全く別の、


まるで大事な物を扱う様な手付きで…。






｢好きだよ、ずっーと俺が守ってあげる…｣





耳元でそう甘く囁かれる。ドキッとしてしまった…



”…私はもしかしたら、黒が好きなのかもしれない。”






、まだ自分の手が震えているのが分かる。




毛布を被ったまま、ずっと私は泣きじゃくっていた。



安心感の涙なのか、恐怖の涙なのか、自分でも分からない






｢あ、ありがとうっ…くろ、｣





｢私も好き…。黒の事が、好きだよ。｣




心配させないように明るく、元気な声で言う。



ぁあ、私は前よりももっと、黒の事を愛している…



自分の心の中で、静かに呟いた。





毛布の外側で、

黒がニタりと笑っているとも、知らずに…

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