Visitor ページ30
昨日食らった銃弾が左腕に残っていた。きっと弓兵がベッドまで運んでくれたのだろう、身体の関節が悲鳴を上げる事は無かった。
とりあえず血を洗い流そうと、風呂で身体を洗って髪を拭いている時だった。
軽やかになるチャイム音。私が出よう、と弓兵が玄関に赴く。その礼装のままで出るなよー、と釘を刺した。
着替え終わった後、リビングにはアルラーナとセイバーがゆったりと寛いでいた。
「え、何してんの。」
「ちょっと聞きたい事があって。」
「次会う時は敵って…」
「あっ、あれは…こ、言葉のアヤってやつよ!とにかく!私はあなたに聴きたいことがあって来たの!」
少女は取り乱したのを咳払いで誤魔化し、本題に入った。
「私が聴きたいのは昨夜言った、夢の事。」
「それには俺も思うところがある。」
「本当!?」
勢いよく立ち上がり、ツカツカと少年の前ににじり寄る。少年は気圧されるように一歩下がった。
「私の夢と似通っているという事?」
「ま、まぁ…あのー…近いデス…」
「あぁ…ごめん。それで?どういう夢なの、それは。」
「話せば長くなるんだが。」
少年は夢の一部始終を事細かに話した。最近はぱったりと見なくなった事も。
少女は自分の手を握ったりしながら話を聞いていた。
「つまり、私とそっくりな女の子とシロツメクサが出てきて、それがだんだん変化する、と。」
「あぁ……それに、兄さんって俺の事を呼ぶんだ」
「えぇ〜何それ。あなた、妹が欲しすぎてそういう夢見るんじゃないの?」
「馬鹿言え!絶対違うからな。」
少年はひと呼吸おいて目を伏せる。
「それにあの子は、約束って言ったんだ。破らないでって。」
「出たわね。約束。妙に引っかかるのよ、その言葉。」
その約束という単語。なんだったか…。思い出せない。記憶喪失という訳でもないだろう。本当に、頭から綺麗にその記憶が抜けている。
「それでね、セイバーは思い出してはいけない事なのかもって」
「一理あるな……」
この金髪の騎士は何か知っていそうで知らないようだ。含みのある人間だと思う。
約束…シロツメクサ…血溜まり…苦しいよ…
全く接点が見つからない。もういい加減分かってもいい筈なのに。
すると、外からチャイムを鳴らさずにドアを乱暴に叩く音がした。
「ノア!ノアさん!早く…早く来て!!」
何事かとドアを開けると、近所に住む顔見知りの少女が目に涙をためながら言った。
「兄さんが危ないの…!」
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時