変わらぬ愛を君に捧ぐ【 sh 】 (ページ11)

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心ここにあらずページ11

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帰り際。小野に言われた言葉がふと頭を過ぎる。
平野くんがいるデザイン部。なぜここに来たのか、押せない扉の前で手を降ろした。

『なにしてんすか』
「……っ！」

後ろから声をかけられて、ビックリして振り向く。
聞き間違えるはずかない低音のハスキーボイスが誰もいないオフィスに響いた。

「……まだいたんだ！お疲れ！」
『お疲れ様です、もうみんな帰りましたよ』
「あ、うん。そう……｣
『……誰かに用でした？』
「うん、あの、小野にちょっとね……｣
『……そっか、小野さんか』

そっと笑って俯いて、また私を見た。
沈黙が広がる。何か言わないと……

「……あ、あのさ！」
『はい？』
「あの子と付き合ったんだね！」
『……ああ、……はい』
「可愛いもんね！美男美女で羨ましいわ！」
『……ほんとに思ってます？』
「思ってる思ってる！」

ちゃんと笑えているだろうか。
今目の前にいるのに、心ここにあらず。

「……じゃあ、行くね｣
『Aちゃん』

その場から離れようとしたけど呼び止められる。

「ん？」
『Aちゃんは幸せ？』
「え？」
『今、幸せですか？』
「なに急に……」
『幸せならいいんです、じゃあお疲れ様でした』

また、そうやって私の心を簡単に奪っていく。
寂しげなその背中を見つめ思う。

あのとき『付き合った方がいいかな？』って聞いてきたとき、
「だめ」って言ってたら何かが変わってたのかな？

私の為に平野くんが必死になって戦ってくれてたことを知るのはまだ先のこと。

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