HOW COME? ページ6
どうして?
名前を呼ばれた後、頭にはそれしか残りませんでした。
「A!」
真横から聞こえる夏音ちゃんの声。
「夏音ちゃん……」
「おめでとう! 特別賞だって!」
ごめんね。その言葉を言おうとして。
「……ありがとう、夏音ちゃん」
「うん!」
言えなかったけど、気持ちは伝わったと思います。
その後。合格者である私たち三名だけが、会場に残りました。
合格者は、私と、夏音ちゃんと、遠藤調さんという方。
「初めまして。遠藤調っていいます。榎原夏音ちゃんと、Aちゃんだね。よろしくね」
調さんは優しくていい方でした。待っている間、調さんとの会話がすごく楽しくて、いろいろ話しちゃいました。やっぱり人柄も、選出理由になるのかも。
「まず、夏音ちゃん。あなたは歌が本当に魅力的。歌手としての活動を多くするといいわね。おめでとう」
「ありがとうございます」
ルミエさんから感想を貰って、嬉しそうな夏音ちゃん。こっちまで幸せになっちゃいます。
「そして、調ちゃん。あなたは観察眼が優れている。トークも軽快。バラエティ系ね。おめでとう」
「ありがとうございます」
次は、私の番ですね……。
どうして、私を選んでくださったのか。
気になって仕方がありません。
「Aちゃん」
「はい!」
ルミエさんは、お二人に対してとは違った、少し尖った口調で呼び止めた、そんな気がします。
「あなたは素晴らしかった。歌も他とは一味違ったし、ダンスも間違いのないものだった。
だけど、足りないの。意志だけが弱い」
空気が先ほどと変わって、重くなってきました……。
勇気を出して、ずっと頭の中を這いずり回っていることを口に出しました。
「どうして、私を合格させたのですか?」
「逆に言うと、あなたが意志を強く持てるならば、あなたは最高のパフォーマーになれる。足りないものを見つけてほしいから選んだの。あなたなら、トップアイドルにだってなれる」
トップ、アイドル。おそらく、女の子の憧れの的でしょう。そんな憧れに、私もなれるかもしれない……。
「……さて、三人とも、芸能人としての活動は、いつからでもいいのよ。準備ができたら、私に連絡してください。初仕事に何をやりたいのか、決めるのはあなたたち自身。基本、セルフプロデュースだからね。テレビ出演・CDデビュー・ライブ……何でもいいわ。どうにかしてあげるから」
ルミエさんは、本当に凄い人なのですね。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年4月12日 1時