露見 ページ1
｢君、"こちら側"だろう｣
くそ、何故バレた。しっかり一般人に模倣できている筈なのに。
｢こちら側、というのはどちら側でしょうか、教祖様｣
｢猿の真似事は楽しいかい？｣
"真似事"。私の術式、"模倣"。呪力を使って様々なものを真似できる。容姿、声、出力を上げれば術式や残穢までも。あくまで私の呪力の形を変えているだけなので、術式効果の大きさは私次第だが。
呪力が殆ど無い非術師の模倣は簡単だが、長時間やると呪力を戻したときに負担が大きくなる。できる限り早急に術式を解きたい。だが粘る。呪力量が多いわけではない私が役に立てることなんて、諜報活動くらいなのだから。ここで"負け"たら私の補助監督と術師の中間みたいな立ち位置が補助監督に成り下がる。帳を降ろすだけの仕事なんて御免だ。
｢失礼ながら教祖様、少々お疲れなのではないですか？｣
｢ああ、疲れている。だから早く化けの皮を剥がしたらどうだい。いや、"猿の皮"と言った方がいいかな？｣
何となく、ぞくりとする。部屋の温度が少し下がったような感覚。突然の"嫌な予感"。空気が重い。
呪霊。
祓わないときっと呪霊に殺される。祓ったらきっと呪詛師に殺される。祓わず呪霊に殺されるということは抵抗しないということ。呪詛師に殺されるのは、少なからず抵抗できるということ。抵抗して勝つなり逃げるなりできるリスクはゼロに近いが、無抵抗で終わるより可能性はある。それなら。
｢祓ったね｣
｢呪霊に殺されるより、呪詛師に殺される方が嬉しいので｣
｢"嬉しい"か。でも残念ながら、私は術師を無闇に殺すようなことはしないよ｣
｢それは良かった｣
｢心がこもってないね、悲しいよ。もうちょっと喜んでくれても良いと思うんだけど｣
｢わーいやったー｣
｢ふふ、いいよ、気に入った｣
帰っていいよ、と言われ、拍子抜けした。普通帰らせるか？殺さないにしても帰らせないだろう。帰れると思わせてやはり殺す気か？
｢君から報告を受けたとして、上層部がそう簡単に攻め入ってくると思うかい？君は上層部の傀儡だろう？それくらい分からないかな｣
｢"君"ではなくAAです。言っておきますが二重スパイはしませんので、上層部が動き出す前にさっさと殺すことをおすすめします。では、高専に帰ってあなたの報告をしてきます｣
｢行ってらっしゃい、AAちゃん｣
にこにこ笑って手を振る呪詛師・夏油傑を挟んで潰す想像をしながら、勢いよく襖を閉めた。
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作者名：Rose | 作成日時：2022年9月18日 11時
