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車に乗り込んで数十分。
目的地に到着した頃には、沢山泣いたせいなのか疲れもそれなりに溜まっていたが、私の心も先程よりかは落ち着いていた。
世一さんは相変わらず私の手を握って離さないが、あれから特に何を言うでもなくただ静かに時間だけが過ぎていく。
「段差気をつけてな」
先に車を降りてスマートに手を差し伸べた世一さんに返事こそ返さないものの、私もゆっくりと自身の手を重ねる。
その様子に満足したのか世一さんは嬉しそうに笑って私の手を強く握り返した。
「…………あの、もう手、大丈夫です」
「俺が繋いでたいだけって言ったらいや?」
「…………」
この人はどうしてこうも恥ずかしいセリフを軽々しく口にできるのだろうか。
変なところでは赤くなるくせに自分の欲望は素直に言い切る世一さんが少し羨ましく思う。
しかし一応私たちの周りには世一さんのSPなのか、黒服の男がそれなりの人数立っているのだ。
彼らの前でこんな高校生カップルのような会話をするのは、私にはとても耐えられたものではなかった。
「……えっ……と」
「いや?」とこちらの同意を求めたはずの世一さんの手の握る力は強くなる一方で、その全く緩める気のない様に私に選択出来る応えは最初から1つしか無いのだと悟る。
「嫌じゃない…………けど恥ずかしいです」
せめてもの抵抗として小さく言葉を付け足した。
周りが見えていない様子の彼に気づかせるように、黒服の方へちらっと目線をやると、世一さんも私の視線を追うように目線を動かし「……あぁ」と納得したように呟いた。
そして私の手を握ったまま黒服の1人の方へ突然向き直ったかと思えば淡々と言葉を発する。
「2人きりにしてくれ」
「っえ」
うそでしょ、?
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YUY - 久しぶりに見たけどやっぱめちゃすち……🫶 (12月10日 1時) (レス) @page43 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
放浪者の神の目になりたい(プロフ) - 潔くんの小説…!!ありがとうございます…応援してます…!! (9月29日 22時) (レス) id: 8d6a7142fc (このIDを非表示/違反報告)
アアアアア??! - 凄く好きです! (9月8日 21時) (レス) @page25 id: fbc26f140f (このIDを非表示/違反報告)
りす(プロフ) - うわぁ、すっごく好きです、。めっちゃ気持ち悪い顔しながら見てます。めっちゃ好きなんで頑張ってください! (8月22日 22時) (レス) @page42 id: 6cf6d64f42 (このIDを非表示/違反報告)
YUY - んんんん気になるなあああ続きがあああすごくいいところで切ってくださる…あいらーびゅー… (5月7日 22時) (レス) @page37 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬川 | 作成日時:2023年2月5日 11時