桜星という高校 ページ8
「まあ、ぶっちゃけ言って各々の個性は強いんだけどな」
と苦笑いを浮かべながら黒尾は答えきる。
「ど、どういうことですか…？」
と日向が聞き返す。
黒尾は少し困ったような顔をした後、
「んー、今日戦って分かったと思うんだけどよ、」
再び話し始める。
「あそこのリベロ、変だと思わなかったか？」
「へん？」
そういわれた日向は、今日のゲームを思い出してみる。
リベロ、ノヤっさんと同じくらいの背丈の人か、と思い当たる。
そしてそこでハッと気づく。
「表情…？」
そう、表情だ。
バレーのプレー中、一時も表情を崩さなかった。
別にそれだけなら不思議でも何でもない。
だが、彼のもとの性格からしてそれはおかしい。
もし、月島や孤爪、青城の国見のように無気力と言われるような
性格の持ち主なら、さほど驚きはしない。
しかし、彼の休憩中などに見せる性格は、どちらかといえば
西谷や日向のような、活発で好奇心旺盛な性格。
それが、何故バレーをしているときはあんなにも
無表情、真顔、そんな顔なのだろうか。
「理由は俺にもわかんねぇよ」
と黒尾はその問いを一蹴し、続ける。
「あと、主将、あいつ、仲間の名前、試合中呼んでねぇだろ」
バレーの試合中に、名前を一切呼ばない、そう言うと語弊があるかもしれない。
だが、彼は‶名前”を呼ばない。
呼ぶときは、背番号。
「それもわかんねぇけどなぁ…。
あと、エース、二年のやつな、」
「あ、あの人、やけにフェイント多くなかったですか⁈」
黒尾が言い終える前に、灰羽がかぶせてくる。
そう、もはやフェイントの意味を疑いたくなるくらい、
多かった。
「なんでですかね、パワーに自信がないとか？」
と灰羽が言った瞬間のことだった。
「そんなことはねーよ！？」
一般にうるさい、と称されるような大声が六人の耳に入った。
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作者名：ちとせあめ | 作成日時：2018年9月12日 23時
