０４：大蛇 ページ7
空を駆ける偽りの汽車は、星の灯りを辿るように進んでいく。
Aはまた手帳にたくさんの文字を書き入れた。そしてそれを、そっと胸に抱く。
｢そろそろです｣と偽汽車が突然そう話し出すから、驚かされた。
｢わかりました｣とAは手帳を握り直し、バッグを担ぎ直す。そして初めて会う大蛇なる妖怪に心を踊らせた。
汽車は見慣れぬ森のど真ん中に停止する。｢妖怪の汽車に、確かな駅など必要ありません｣と言うのが偽汽車の言い分だ。
鴉天狗がAに｢足元には気を付けよ｣と手を伸ばす。──綺麗な金の刺繍が成された黒い手袋に覆われた手だ。
黒い余裕のある和服にも金の刺繍が派手に成されており、手袋と相まって非常に美しい。
Aはそんな鴉天狗の手を取りながら汽車から降りた。
真後ろから｢かあ、気取ってんなァ鴉天狗｣と猫又が皮肉を垂れ流すが、鴉天狗は何のそのと言った様子だ。
鴉天狗は元よりとても高貴な妖怪で、力も強い。
対して猫又はかなり庶民的な妖怪であり、人間の町でも探せば見付からなくもない。下級の妖怪。
ただし、猫は賢く妖力が高くなりやすい。下級だと馬鹿にする妖怪は多いが、長く生きた猫又は、犬神に匹敵することもあるという。
Aはそう鴉天狗から聞かされていた。
偽汽車は汽車から離れることは滅多にない。何しろ汽車が本体だからであるそうな。
ゆえに大蛇に会いに行くのは、Aと猫又。そして鴉天狗の三人だけである。
鬱蒼とした何処とも知れぬ暗い森の中を、鴉天狗の手だけを頼りに進んでいく。
猫又が｢馬鹿。俺様も頼れェ｣と言うが、正直何を頼れば良いのか解らない。
｢猫はな。夜行性なんだ。夜道を頼るならカラスよかあ俺様がいいぞ｣
｢なら手を引いてやらないか｣
手を首の後ろで器用に組みながら、猫又がそう言う。だが鴉天狗の切り返しも中々のものである。
しばらく進むと、大きな洞穴が見えた。湿った風がねっとりと流れている。
何処をどう進んだのか全くもって謎だが｢解らないでいい｣とぴしゃりと猫又に言われてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます！！(*´ω｀*)そう言っていただけて大変光栄です(*´･ω･｀)bこれからも頑張ります！！ (2018年4月5日 17時) (
レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです！こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます！オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです！＼(^o^)／ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます！ (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年11月24日 14時
