07:鯉のぼり ページ13
次の日の夕刻。冬の空は既に暗くなってしまった時間帯。
Aはまた重そうなバッグを背中に担ぎ、よろよろと山の上にまでやって来た。
変わらず猫又たちはそこにいる。鴉天狗とやんや、やんやと話していたが───Aに気付いた瞬間、猫又は彼女の側に駆け寄った。
「おおい。やっと来たかあ」
猫又はまた、本人の了解無く抱き着く。彼はいつもだ。
A自身動物は好きで、昔は家でも飼っていたほどゆえあまり気にしていないのだが。
「……昨日。セクハラだ、なんだと騒いだのは何処の誰だか」
鴉天狗が呆れながら葉っぱの団扇を振り上げれば、何処からともなく凄まじい旋風(つむじかぜ)が巻き起こった。
その風はいとも容易く猫又をAから引き剥がし、遥か向こうにまで吹き飛ばす。
ころんころんと転がって行った猫又は、駅の柱に頭をぶつけてようやく止まった。
「何すんだ! カラス野郎!!」と怒鳴る彼の声も若干遠く感じる。
鴉天狗は猫又よりずっと大人のような振る舞いをするが、如何せん根に持つ性格であるらしい。
ふんっとそっぽを向く彼が、たまに猫又より子供っぽく見えてしまう。
「そろそろ偽汽車もやって来よう。今日は誰に会いに行くか」
「たまにゃあ俺様、Aとゆーっくり話がしたいね。毎日出掛けると疲れんのよ」
「駄目だ。Aは空が高いうちに作品を仕上げたいと言っているのだ。冬は短いぞ」
猫又はなおも「別に冬中に急ぐ必要ないし」とぶつくさと垂れ流すが、鴉天狗はそんな猫又の頭をぴしゃりと扇で叩いた。
「何度も言わせるでない。───冬は短いぞ」
なにやら、『冬』に拘っているのは鴉天狗も同じであるようだ。……それが何故かは解らないが。
猫又も渋々立ち上がると「しゃあねえなァ」と腹を決める。
「で、何処に行くよ? 俺様的には……そうだな。──今の季節なら竜がおすすめだ。良いぞ、竜は」
その猫又の言葉に、Aは「え! 竜が見れるの?」と目を輝かせた。
猫又は「あたぼーよ」とまた覚えたての言葉を使う。
「竜と言っても、成り立てで位も随分低い奴だ。それでも見るか?」
「見る!」
「では滝に向かおうか。偽汽車には"鯉のぼり"を見ると伝えよう」
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます!!(*´ω`*)そう言っていただけて大変光栄です(*´・ω・`)bこれからも頑張ります!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです!こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます!オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです!\(^o^)/ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぁびぃ(駄作者) | 作成日時:2017年11月24日 14時