検索窓
今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:86,017 hit

3 ページ3






 そして目が覚めたら異世界だった件。


ウソ。
異世界の方が数百倍マシだったと思ってる。
努力して勝利する完全無欠のハッピーエンドと比べたら相応に。


それに、椅子に座った軟禁から始まる冒険物語は、ちょっと困ると思わない?





「あ、起きた?」

「起きたくなかった。おやすみ」

「まあまあまあ」





再び目を閉じようとする私を止めたのは、目の前の教祖。

もとい、夏油傑。

私の最後の記憶もやっぱり夏油傑。
此奴は未だ直、私の人生に果敢に登場しようとしてくるらしい。人間諦めって肝心なのに。


私を逃すつもりはないのか、腕は椅子に後ろ手で縛られていた。





「まったくA、なんで寝るんだい」

「傑から気絶させたんでしょ」

「それはそうだけど」





認めた。認めましたよお巡りさん。
やっぱり此奴、私を気絶させて高専から誘拐しましたよ。





「なら未だ寝る権利が私には有る」

「勇気と無謀を履き違えるのは止めた方がいいよ」

「傑はベッドでも此処でも寝かせてくれないよね」

「それ今言う?」





煽るように言ったし、実際それ目的で言った。

夏油は苦笑しながら笑えない力で私の顎を掴んだ。恋人ってんなら丁重に扱ってよ。
それと、余裕の無い男は嫌われるって言ったじゃん。






「今さらだけどA、状況分かってる?」

「此処がアジアってことまでは分かる」

「真面目に」

「傑がアジアンビューティってこともわかる」

「本当に空気を読まないよね」

「ありがと」

「褒めてないよ。生意気な口にはキスするよ?」

「私にとって空気は吸って吐くものだから。キスはいや」





イヤ?と聞かれて笑みで返事すると、傑は乱暴に唇を重ねて来た。性急にも程がある。


酷く甘美な味は何ヶ月振りだろう。
 嗚呼。ちっとも嬉しくない。


 こんなキスするくらいなら、新作のルージュでも塗ってこれば良かった。
折角ワインレッドの買ったのに。
ああ勿体ない、と考える私には余裕がある。



 だから術式を使った。

 が。





「それは困るね」





術式は発動しない。
というか、呪力が使えない。後ろ手に縛られた縄に吸い取られてる気がする。


傑は笑った。オーケー把握。
サイアクってことね。


此奴、そういえば特級呪術師だったと思い出した。

だからこんなことになってるのだ。





「深く接触して、術式使おうとした?」





正解。


大正解だよ、間違い野郎が。




4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (516 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
722人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

のんのんた(プロフ) - ワードセンスがピッカピカですらすら読ませていただきつつ、はちゃめちゃ笑わせていただきました…。お話の雰囲気本当に好きです…。 (2022年12月8日 23時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 面白かったです!素敵な作品をありがとうございます! (2022年3月3日 12時) (レス) @page10 id: 8c70df45d4 (このIDを非表示/違反報告)
ミントティー(プロフ) - み り ん 。さん» 書いていてとても楽しかったです。読んで頂きありがとうございました! (2022年2月28日 16時) (レス) id: 38ab85e584 (このIDを非表示/違反報告)
み り ん 。(プロフ) - 完結おめでとうございます!!このような神作を作っていただきありがとうございました!!お疲れ様です!! (2022年2月28日 16時) (レス) @page10 id: 2f94ade894 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても面白かったです。完結おめでとうございます。 (2022年2月27日 22時) (レス) @page10 id: 69206d8b84 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミントティー | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月26日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。