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そして目が覚めたら異世界だった件。
ウソ。
異世界の方が数百倍マシだったと思ってる。
努力して勝利する完全無欠のハッピーエンドと比べたら相応に。
それに、椅子に座った軟禁から始まる冒険物語は、ちょっと困ると思わない?
「あ、起きた?」
「起きたくなかった。おやすみ」
「まあまあまあ」
再び目を閉じようとする私を止めたのは、目の前の教祖。
もとい、夏油傑。
私の最後の記憶もやっぱり夏油傑。
此奴は未だ直、私の人生に果敢に登場しようとしてくるらしい。人間諦めって肝心なのに。
私を逃すつもりはないのか、腕は椅子に後ろ手で縛られていた。
「まったくA、なんで寝るんだい」
「傑から気絶させたんでしょ」
「それはそうだけど」
認めた。認めましたよお巡りさん。
やっぱり此奴、私を気絶させて高専から誘拐しましたよ。
「なら未だ寝る権利が私には有る」
「勇気と無謀を履き違えるのは止めた方がいいよ」
「傑はベッドでも此処でも寝かせてくれないよね」
「それ今言う?」
煽るように言ったし、実際それ目的で言った。
夏油は苦笑しながら笑えない力で私の顎を掴んだ。恋人ってんなら丁重に扱ってよ。
それと、余裕の無い男は嫌われるって言ったじゃん。
「今さらだけどA、状況分かってる?」
「此処がアジアってことまでは分かる」
「真面目に」
「傑がアジアンビューティってこともわかる」
「本当に空気を読まないよね」
「ありがと」
「褒めてないよ。生意気な口にはキスするよ?」
「私にとって空気は吸って吐くものだから。キスはいや」
イヤ?と聞かれて笑みで返事すると、傑は乱暴に唇を重ねて来た。性急にも程がある。
酷く甘美な味は何ヶ月振りだろう。
嗚呼。ちっとも嬉しくない。
こんなキスするくらいなら、新作のルージュでも塗ってこれば良かった。
折角ワインレッドの買ったのに。
ああ勿体ない、と考える私には余裕がある。
だから術式を使った。
が。
「それは困るね」
術式は発動しない。
というか、呪力が使えない。後ろ手に縛られた縄に吸い取られてる気がする。
傑は笑った。オーケー把握。
サイアクってことね。
此奴、そういえば特級呪術師だったと思い出した。
だからこんなことになってるのだ。
「深く接触して、術式使おうとした?」
正解。
大正解だよ、間違い野郎が。
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のんのんた(プロフ) - ワードセンスがピッカピカですらすら読ませていただきつつ、はちゃめちゃ笑わせていただきました…。お話の雰囲気本当に好きです…。 (2022年12月8日 23時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 面白かったです!素敵な作品をありがとうございます! (2022年3月3日 12時) (レス) @page10 id: 8c70df45d4 (このIDを非表示/違反報告)
ミントティー(プロフ) - み り ん 。さん» 書いていてとても楽しかったです。読んで頂きありがとうございました! (2022年2月28日 16時) (レス) id: 38ab85e584 (このIDを非表示/違反報告)
み り ん 。(プロフ) - 完結おめでとうございます!!このような神作を作っていただきありがとうございました!!お疲れ様です!! (2022年2月28日 16時) (レス) @page10 id: 2f94ade894 (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - とても面白かったです。完結おめでとうございます。 (2022年2月27日 22時) (レス) @page10 id: 69206d8b84 (このIDを非表示/違反報告)
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