1 ページ1
・
呪詛師認定された夏油傑とは、所詮恋人同士だった。
傑が非術師を大量虐殺していたとき。私は隈を擦りながら隈仲間硝子と意味もなく笑い合ってた。
仕方がないと言えればいいが。
そんなことを言う権利は私には無いらしい。
そのときは、何にも知らなかったというのに。
彼は貴重な特級呪術師。
私はしがない非戦闘員。
ではなく。
私は硝子と似たような立ち位置の、割と重要な非戦闘員だ。
『解呪術式』、というもの。
そんな稀有な術式持ちの私は、硝子とタッグを組んで社畜万歳と日々悲鳴を上げている。
「A、c-12番の瓶取ってきて」
「ん。抜糸は」
「いい。ついでに右ベッドの患者を頼む」
「腹部に呪力過剰摂取の?治療は」
「済んだ」
「おっけ」
流れるような作業に脳みそが焼ける。傑が居なくなって、患者が増えたからだ。
そりゃそうだ。だって三人しか居ない特級サマが一人抜けてしまったのだ。
何してんだろ、あの人。
かつての恋人に思いを馳せる。
「硝子、完了。他は?」
「他は、今はいない」
「今は」
「一人頭打って寝てる」
「そんまま脳みそぐちゃぐちゃになればいいのに」
「ははっ」
疲れてるな、お前。なんて硝子は言う。硝子の目元には乙女らしくない陰りが宿っている。
それは私も同じ。
結局私たちは疲れているのだ。
だってそうだろう。
「ソイツ、硝子が灰皿で頭打ったじゃんね」
患者としてやって来た中年術師は、胎がどうのこうのと言うタイプだった。
あーめんどい。それで済めばいいが。
ソイツが硝子の尻に触れた途端。
硝子は何の躊躇もなく、ソイツの頭を灰皿で強打した。
そして今に至る。
「起きたら面倒になるよ」
「起きなくなる方が面倒だろ」
「ナイフで喉元掻っ切ればよかったのに」
「事案だな。お前まで呪詛師になるつもりか?」
そこまで言って、硝子はぐにゃりと表情を歪め、「ごめん」と謝ってきた。
「ん」と私は否定とも肯定とも言えない返事をする。
「やっぱり、私たち疲れてるね」
そんなこと言った硝子も。
否定しない私も。
・
722人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんのんた(プロフ) - ワードセンスがピッカピカですらすら読ませていただきつつ、はちゃめちゃ笑わせていただきました…。お話の雰囲気本当に好きです…。 (2022年12月8日 23時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 面白かったです!素敵な作品をありがとうございます! (2022年3月3日 12時) (レス) @page10 id: 8c70df45d4 (このIDを非表示/違反報告)
ミントティー(プロフ) - み り ん 。さん» 書いていてとても楽しかったです。読んで頂きありがとうございました! (2022年2月28日 16時) (レス) id: 38ab85e584 (このIDを非表示/違反報告)
み り ん 。(プロフ) - 完結おめでとうございます!!このような神作を作っていただきありがとうございました!!お疲れ様です!! (2022年2月28日 16時) (レス) @page10 id: 2f94ade894 (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - とても面白かったです。完結おめでとうございます。 (2022年2月27日 22時) (レス) @page10 id: 69206d8b84 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ