５話 あの子について ページ6
撮影が終わると、スミレさんは静かにその場を立ち去ろうとする。しかしファンがそれを見逃すわけがなく、スミレさんが一歩踏み出すと人だかりもその分移動して、私はもみくちゃにされるままに人ごみに押されて押しつぶされた。
むぎゅ、と口から出た奇妙な声も、スミレさんへの声援や歓声に混じって消えていった。
「スミレちゃーんっ！ いつも見てます！」
「こっち向いてー！」
男女問わずの歓声に、スミレさんはちらりと視線をやる。人だかりの熱気を遠目から見たあと、何かマネージャーと話すと踵を返してこちらへ向かって来た。尚更熱気と歓声がもりあがり、絶頂を迎える。まるでアイドルだな……と肩を竦めた私は、それでもそのノリに乗ろうかと口を開く。
ファンの歓声に混じって、ダメもとで聞いてみるのもいいかもしれない。すぅっと肺いっぱいに空気を吸い込んで、歓声に混じりながらもなんとか口から声を零す。
「あのっ、リーネさんのことでお尋ねしたいことが！」
「貴女、あの子のことしってるの？」
その的確な落ち着いた声に、目を見開く。掴まれた手はひやりと冷たい感覚を覚え、真っ直ぐに私を射抜く菫色の瞳は水晶のように澄んでいた。先ほど見た時よりも随分と近い顔は、一体いつの間に近付いてきたのか。
あの子と形容されたのは、きっと私が聞いた「あの人」のことである。あの人のことそんな親しげに呼べるのは、二年以上前からの知り合いである人だろう。ここにその条件が当てはまる人物は、ただ一人。
「す、スミレさ、ん？」
「お話しましょう。丁度昔話がしたいところだった」
落ち着いた声音でそんなことを言われて、ダメ元だった私は瞬きを繰り返す。細くて白い手には存外力が籠っていて、ぐいっと私を人混みから引っ張り出す。そんな華奢な体の何処に力があったのか、色々と突然すぎる展開に、私は手を引っ張られながらスミレさんを驚いて見つめた。
スミレさんは私の反応なんて構わず、驚異的な足の速さでファンのみなさんを撒いていく。こんなドラマのような展開になるとは思わず、手をひかれながら訳も分からず走る私は、息も絶え絶えになりながら、恐る恐るスミレさんに対して言葉を投げかける。
「あ、あの、話って」
「リーネのこと」
聞きたいんでしょ？ と首を傾げられる。その人の名前が出された途端、私の目は分かりやすく輝いた。
思えば、これが私の旅の明確な目的を作る、第一歩だったのである。
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クレラップの人の髪型してる人です - めっちゃ読んでます。一日にシリーズ10ぐらい読んでます。(最高記録)←自慢です⌒∀⌒ (2018年2月4日 5時) (
レス) id: d57e434323 (このIDを非表示/違反報告)
リー - 部活動が落ち着いて久しぶりに来てみたら完結していて慌てて読み終えたところです。笑読み始めた頃はまだ小学５年生だったのですが、お話が深くとても感動する作品でした。どうかお体に気を付けて、今作も楽しみにしています！ (2017年2月9日 1時) (レス) id: 0cfb568c00 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - 花夜さん» わー有難うございます！！ 二年後のお話まで目を通していただけて嬉しいです！ いずれ戦うことになるかもしれないバトル、どちらが勝つかはお楽しみということですね！ (2016年12月10日 18時) (レス) id: 38fa76f22b (このIDを非表示/違反報告)
花夜(プロフ) - 君はいつだっての二年後だと聞いて(見て？)来ました！！あー、リーネちゃんと戦うのか……。前作を見たからリーネに勝ってほしいという気持ちが……w (2016年12月10日 18時) (レス) id: ab23184840 (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - ルカ@リュカさああああああああんさん» それは物語が進めば分かるのだ！ リュカさん登場を願っているのが名前からひしひし伝わってくるけどもうちょいまってな！ リーネパイセンのよいしょを見てその発言はすごいよルカ！！！ (2016年12月10日 16時) (レス) id: 38fa76f22b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：miku
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/katudoutyu12/
作成日時：2016年12月1日 20時
