泣きたい時は〈占い師〉 ページ3
side A
時々ふと、泣きたいと思うことはないだろうか。
辛いとき、苦しいとき、寂しいとき、他にも泣きたいときがあるだろう。
胸が苦しくて、息がしづらくて。
誰かの腕に抱かれて泣きたい、なんて思ったりする。
でも、誰かにそんなことを言えるはずもなく、荘園の皆にはいつものように装って、辛いのを我慢する。
どうして辛いのかわからない。
でも、何故か心臓を掴まれているような感覚に、泣きそうになって、それを必死に堪える。
みんなに断りを入れ、部屋に戻る。
パタン、と音を立て閉じた扉に、背中をあずける。足から力が抜け、体がズルズルと下がっていく。
口から嗚咽が漏れるも、目から涙が出ることはない。
ピー、ピピ
鳴き声に、顔を上げれば、開けていた窓に梟が止まっていた。
その目は蒼く光っていた。
イライの、梟？
そうわかった瞬間、急いで窓に駆け寄る。
『だめ！！』
大声をあげると、梟は私の部屋の中へ入っていく。
「すまない」
ドアのほうから、テノールの声がし、振り返れば占い師のイライ。
時すでに遅し、か。
だが、彼を見ると目に涙が溜まっていく。
それを零さないように必死に目を開く。
「A」
やめてよ。あなたのその声で私の名前を呼ばないでよ。
「A」
こっちに来ないでよ。
「A」
やめてよ……どうして私なんかに微笑むのよ。
「おいで、A」
広げられた腕に飛び込む。
目から無数の涙がボロボロ、ボロボロとでてきて、止まることを知らない。
彼の体温を布越しに感じとり、温かさにもっと涙が出てくる。
「大丈夫、大丈夫だよ」
貴方からのその言葉だけでも嬉しい。
たとえ、それに意味がなくても、ただその言葉だけが私の頼りになる。
「A、泣きたい時は僕の胸を貸してあげる。僕を頼ってくれ」
それに肯定の意を込めて、彼の服をギュッと握る。
彼も苦しくないように抱きしめてくれる。
ねえ、好きよ。イライさん。
貴方に婚約者なんていなかったら、私を選んでくれてたのかしら。
なんてね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カリム - ああ、もうカールくんの独占欲がたまらないです。ありがとうございます!!!!! (2019年12月6日 16時) (
レス) id: 35a1e7e527 (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - ぽぴらさん» ｴﾍﾍ、ありがとうごぜます！イライくんの、お話は作者自身特に気に入ってます^^ リクエストありがとうございます！遅くなるかもしれませんが、書かせていただきます！ (2019年7月3日 1時) (レス) id: c869138d76 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - うっ……好きです。。イライくんのお話の最後が、はわーってなりました、、！もしよろしければ、ジョゼフさんがちょっと意地悪なのにたじたじな夢主さんでリクお願いしたいです、！ (2019年7月2日 18時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)
鯖の味噌煮(プロフ) - とりケツさん» ﾊﾜﾜ、ありがとうございますm(*_ _)m (2019年4月9日 17時) (レス) id: c869138d76 (このIDを非表示/違反報告)
とりケツ - ひぇぇ、すごく好きです.......沢山の方に読んで欲しい.......！ (2019年4月9日 1時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：歌月 | 作成日時：2019年4月8日 20時
