検索窓
今日:8 hit、昨日:13 hit、合計:235,178 hit

story.9 ページ9

*




「彼がミサを見学したいそうだ、ついていてげて欲しい」

「……わかりました」


恐る恐る顔を見上げると、牛島若利。
私が顔を上げると牛島くんはびっくりしたように目を丸くした。


「こちらです」

「あの」

「はい?」


私の席の隣に座らせると、牛島くんは珍しく敬語で話し出した。
まだ半信半疑なんだろう。


「あなたに似た人が知り合いにいるのですが、お名前を聞いてもいいですか?」

「マリア・エディットです」


気づかれたくない。
私は洗礼名を答えた。
嘘じゃない。
わからないはず。


「それは洗礼名ですよね?」


鋭い。
やっぱり頭いいとしっかり勉強してるんだ。
どうしよう。


「……AA」

「やっぱり、お前か」


私はバツが悪くて、そっぽ向いた。
牛島くんがまたなにか言おうとした時、黙想の時間が来た。

助かった。


「父と子と精霊の御名によって、アーメン」


起立し、一同がそう言うとついていけない牛島くんが立ち尽くしていた。


「私と同じように立ったり座ったりしてれば大丈夫」

「わかった」


そう小さな声で話した。
私は司祭様のお言葉に耳を傾けた。
聖体授与の時間。


「まって、牛島くん」

「なんだ?」

「洗礼は受けてないよね?」

「ああ」

「じゃあ貰っちゃダメ、手を合わせて頭を下げて。そうすれば、司祭様が祈ってくださるから」

「わかった」


私は聖体を受け取り飲み込む。
そして主の前で膝をつき素早く十字を切った。
司祭様に祈ってもらった牛島くんはぽかんとして、席に戻った。

story.10→←story.8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (251 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
295人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

時雨彩(プロフ) - 鶴まじ天使さん» コメントありがとうございます!私も久しぶりに書いたこの作品をたくさんの方に評価していただいて本当に嬉しいです。ご愛読ありがとうございました! (2019年8月15日 23時) (レス) id: 8a1a36a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
鶴まじ天使(プロフ) - すっごく良かったです!牛島さんと夢主ちゃんが微笑ましかったです(o^∀^o)時雨彩さんの作品はこの作品が初めてなんですがとっても良かったです!時雨彩さんのファンになっちゃいました!これからも頑張ってください!応援してます!! (2019年8月15日 23時) (レス) id: 2390bd5229 (このIDを非表示/違反報告)
時雨彩(プロフ) - みずいろさん» コメントありがとうございます!牛島くんのかっこよさは表現しづらいので頑張りました笑、ご愛読ありがとうございます! (2019年8月13日 22時) (レス) id: 8a1a36a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
みずいろ - めっちゃいいお話で感動しました!牛島君のカッコよさが伝わってきてやばかったです笑笑これからも頑張って下さい! (2019年8月13日 10時) (レス) id: 945c36f775 (このIDを非表示/違反報告)
時雨彩(プロフ) - 4696Loveさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しい限りです。ご愛読ありがとうございます! (2019年8月11日 16時) (レス) id: 8a1a36a2a7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:時雨彩 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年8月8日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。