【牛島若利】牛島若利の落とし方【HQ】

story.7 ページ7

*




「A、好きな人とかいないの？」


休み時間、教室の隅で女子が固まって話すなんてよくあること。
私は高３で初めて1組になったためあまり知り合いはいない。

そんな中グループに入れてくれた子達。
感謝している。


「ね、誰？」

「田中とか？」


私を囲んで問い詰める。
牛島くん、なんて言えず笑ってやり過ごそうと思った。


「Aのこと全然知らないんだもん、誕生日とか家とか好きなものとか」

「中学から同じなのに」

「教えてよー」


そう言われると、何も言えない。
私はゆっくり口を開いた。
小さな声でつぶやくように、言った。


「牛島くん」

「えっ！」


3人の静かな叫びが聞こえる。
彼女たちは目配せをしてニンマリ笑う。


「協力する！」

「いいじゃん、2人とも頭良いし足速いしお似合い！」

「わかるー！」


きゃーっと盛り上がる。
私も同じように言ってみた。


「A可愛いっ」

「顔赤いよ、照れてる！」

「いい感じ」


楽しくて笑った。
こんなの久しぶりだ。
愛想笑いなんて良くするけど、自然に笑みがこぼれる。


「A」


突然、低い声で呼ばれた。
声の主は牛島くんだった。
3人はニヤニヤしながら私を前に出す。


「今日の補習は出られそうにない。プリントを貰っておいてくれないか」

「あ、うん、良いよ」


顔の中心の熱が集まる。

story.8→←story.6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す