【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ33)

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「あー、徹？ A？なに、喧嘩でもしたの？」

「してない……」

翌日、私と及川くんの間に流れる微妙な空気を察して、友人が心配する。
喧嘩ではなく、痴情のもつれというのか……？

国語には疎かったからか、語彙力はないし難しい言葉もわからない。
理系と決めてから国語なんかやらなかったな。

思考をねじ曲げるように、高校のことを懐かしむ。
高校の時、好きだったな、あの人のこと。

まだふと思い出す及川くんのお兄さん。
ズキンと胸が痛くなる。

がちゃんっと大きな音をたてて、ドアが開き髪の長い女性が入ってきた。
スタイルも良くてブロンドの長い髪を巻いたゆるふわ系女子とでも言うような女性。

「徹ー！！」

「研究室は勝手に入らないでくださいって」

そう言いながら追いかけるように入ってくる全研究室の管理人さん。

「徹、なんでメール返してくんないの！？」

「なんでって、俺研究室入りしたから時間ないって言ったよね？」

「忙しいとか言い訳じゃん！」

「ていうか、俺たち付き合ってもないのになんで束縛してくるの？」

私をちらっと見る及川くん。
ヘラっとした笑顔をやめて、真剣そうに言った。

「正直なところ、好きな人できたから他の子とは連絡とりたくないんだよね」