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「お疲れ様です」
「ああ、及川くん、お疲れ様」
昨日、合コンに行ってわかったことは2つあった。
1つ目は合コンはろくなことがないこと。
2つ目は及川くんが優しすぎて、その優しさを感じる度に罪悪感を感じてしまうこと。
全て分析してしまう癖はきっと職業病のようなものだ。
及川くんがパソコンに向かって座り、メガネをかける。
「Aさん」
「ん?」
及川くんが口ごもる。
自分から話しかけたくせに、とおかしくて少し笑ってしまう。
及川くんも少し笑って言った。
「Aさんの髪、いいですね」
「褒めても何も出ないよ」
「出ないんですか?」
「でないよ」
そんなくだらないことを言い合って、お互い作業をそれぞれ進める。
ふと時計を見るともう3時間が経って、日が傾いていた。
いい時間だし、今日はなんだかんだ疲れてしまった。
久しぶりの講義もあったし。
私は帰るために荷物をまとめていると、及川くんも帰る準備をした。
また、送る気なのかななんて。
流れというのは恐ろしいもので、言葉は交わさないくせして一緒に帰ることになってしまった。
今から1人でさっさと帰っていくのは不自然極まりない。
隣を歩く及川くんに話しかけようとすると、誰かに声をかけられる。
「及川!」
「岩ちゃん!」
岩ちゃんと呼ばれた人に駆け寄って、抱きつく及川くん。
私が苦笑いしていると、及川くんが言った。
「大学の先輩のAさん、可愛いでしょ」
「どうも、岩泉っす」
「Aです、よろしくお願いします」
私を含めた3人の間に妙な空気感が漂い、間ができてしまった。
歳上としてどうにかしなきゃ、と思い言う。
「あー、私用事あるので帰りますね、またね、及川くん」
「ちょ、待ってください」
少し焦ったように私の腕を引く。
「おお、珍しいもん見た」
岩泉くんが不思議そうに私と及川くんを交互に見て、そう感心する。
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いずみ(プロフ) - とても面白くて、先が気になるお話です! (2019年10月20日 21時) (レス) id: ce54617277 (このIDを非表示/違反報告)
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