【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ1)

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高校時代、初恋ではないけれど自分にしては大きな恋をしたと思う。
相手は大学生。

オープンキャンパスで話した程度の仲の大学生。
何かあったわけじゃない。

驚くほど何も無い。
彼を追って同じ大学に入ったものの、彼は院には進まず就職したらしい。

「及川徹です、よろしくお願いします」

「院2年のAAです、よろしくね」

今朝、恋をした彼に似た男子を見た。
きっとそれは及川くんだ。
面影や雰囲気が似てるから、つい思い出してしまう。

次々と新しく配属された3年生や研究室で活動する院生や大4が挨拶をする。

「……なんですか？」

一通りの自己紹介を終え、帰る人や研究に勤しむ人などに別れる。
及川くんが私にそう言った。

用は、ないけどな。
私は笑って言った。

「なにが？」

「見てたんで、俺の事」

「違うよ、及川くんじゃない」

及川くんに重なる彼だよ、なんて。
雰囲気や顔しか覚えていないような彼のこと、まだ好きなんて私も諦めが悪い。

及川くんほどイケメンじゃなくて、及川くんほど声にハリがあるわけじゃない。
でもどこか優しそうな人。

「今の、俺恥ずかしいですね」

及川くんが、そう言って笑った。
及川くんほどの容姿ならそう思うのも無理はない。