【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ8)

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ヤバいと思った時にはもう遅くて、彼はあからさまに眉をひそめてこう言った

｢俺と飲むのが辛いって、どうゆうことですか｣

｢え……いや、寝ぼけてて……その｣

慌てて弁護するも彼のイライラが募るだけ
すると及川君は私の左腕をグイッと引っ張って、強引に研究室を出た

私の前をズンズンと進む彼を見て、何処か怒ってるように見える

｢ちょ、及川君……、速っ…｣

｢…………あの｣

いきなり呼び掛けられ驚きながら背の高い彼を見上げる。彼は前を向いているし、夜道で暗いので彼の表情は見えない

｢誰でも一緒に飲むの嫌って言われたら……その、気にしますから｣

｢……え………ごめん｣

思わず謝る
確かに気にするけど、こうもまっすぐ言われるとは思ってなかった

｢Aさん……いや、A先輩。今から飲み行きましょ………後輩の頼みですから、断らないでくださいね｣

｢あ……はい｣

逃げ道を絶たれ、私はそう返事をしてしまった

及川君は私の左腕を掴んだまま、近くの飲み屋通りの一件の居酒屋に入った

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四人掛けの席に向かい合うように腰掛け、店員さんがおしぼりを運んでくる

｢とりあえず生2つ｣

誰もが一度は聞いた事あるようなセリフを口にした及川君を見ながら、またふとあの人が頭を過ぎる

彼を見る度にあの人と重ねてしまう

もう一度会えるかも分からないのに

……あぁ、もういいや。
今日は飲もう、やけ酒だやけ酒。

そう心の中で決めながら、熱いおしぼりで手を拭く

｢何頼みます？｣

及川君がメニューを開く
私は焼き鳥の欄等に目を向けた

｢うーん……なんでもいいけど……あ、砂肝｣

｢渋いですね｣

聞いといて何だよ。と思いながらその他に食べたいものを言っていく

｢生2つと、お通しです～！｣

その時、元気な店員が頼んだお酒とお通しの枝豆の塩茹でを持ってきたので、そのまま及川君が注文してくれた

｢～～と、鳥のタレ三本と砂肝二本、皮のタレと塩二本ずつ……あ、あとインサラータ・カプレーゼと、エイヒレお願いします｣

｢かしこまりました～！｣

カプレーゼを聞いて女子か！と思ったが……

エイヒレ。渋いって……あなたも大概ですけど

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