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私の渡した論文を片手に、こちらを見上げる彼
少しの間の後、彼はかけていた眼鏡を外し悪戯っ子の様に少し口角を上げて
「何やってたと思います?」
「えっ」
まさかそんな返しをされるとは思ってなくて少し固まる。この容姿だし、やはり女性の扱いには慣れているのだろう
あの人はこんな風に意地悪はしない、そう考えるとなんだか安心する
高身長の彼が似合いそうな部活か
「そうだな……バスケとか?」
「残念、違います」
「サッカー?」
「まぁ、出来なくはないですけど違います」
結構本気な答えなんだけど、ここまで間違えると少し恥ずかしい。彼は面白いものを見るようにニヤニヤしながらヒントをくれた
「そうですね、ボールを落としたら負けです」
「……落とす……あ、バレー?」
そう答えると、及川君は " 正解です " とはにかむように笑う。なんだろう彼は本当に表情豊かだ
「高校時代は本当にバレーばっかしてました」
「へぇ、凄いね」
そんな感想しか出ない自分に嫌気がさす。
それに及川君の情報を知ったところであの人の事が分かる訳でもない。このままでは、気まずさを和らげる事は出来ても虚しさが残りそうだ
私はわざとらしく腕時計に目を向ける
「あ、ごめん。まだ全然論文進んでないからやらなきゃ……また、なんかあったら呼んでね」
「はい、ありがとうございます」
そう会話を切り上げてそそくさと自分の席に戻ってパソコンと向かい合う
本当は結構進んでるし、余裕はある
私は携帯にイヤホンを繋げ音楽をかけて耳を塞ぐ
タンタンとキーボードを叩きながら、さっき買ってきたコーヒーを一口飲んだ
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いずみ(プロフ) - とても面白くて、先が気になるお話です! (2019年10月20日 21時) (レス) id: ce54617277 (このIDを非表示/違反報告)
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