【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ41)

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*及川side

バイトだと言って彼女と別れて、考える。

"後悔しない道を選べばいい"
それは簡単な事じゃないとAさんもわかってるはず。

離したAさんの右手の感触や温度が、熱く俺の頬に残る。
交差点で別れてしまったけど。

「後悔かぁ」

飛雄に手をあげそうになった時は、岩ちゃんが止めなかったら後悔してたのかな。
……してたか。

俺は方向をぐるっと180度変えて、走り出した。
交差点を曲がって、歩くAさんの元へ。

バイトなんかどうでもいい。
ふと頭をよぎる。
"後悔しない道を選べばいい"だなんて、まるで一生の別れで歳上が言うセリフ。

それにさっき頭を撫でてくれたことだって。
俺は後ろからAさんの細い身体を抱きしめた。

「わあっ」

「Aさんはっ」

酷くびっくりした様子で、肩を震わせるAさん。
息が整わないまま、俺は言う。

「Aさんは就職するんですかっ」

「うん、するよ」

「なんで……！」

研究室に残ってくれなんて教授にわざわざ言われる人なんかそういないのに。
Aさんだってわかってるはずなのに。

就職なんかしてしまったらAさんは今よりもずっと遠い人になってしまう。

「急にどうしたの」

「俺っ！手術うけるんで、バレー界に戻るんでっ！」

「え、そう……」

「俺のこと見て、ください……」

何よりもバレーが好きだ、それは今も昔も変わらない

Aさんが就職して遠くなってしまうなら。

それなら俺が有名になって、俺を記憶から消さなければいい。

俺を見てもらえるようにすればいい。

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