【天童覚】カフェ・ノスタルジア【HQ】

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*天童side




「被検体やってきます！」


そう元気よく言うAちゃん。
ビラには人工味蕾移植臨床検査の文字があった。

ビラの下には大事そうな書類がホチキス止めされている。
日が来週から3週間。

俺が原因じゃなかった、ということに安堵のため息を漏らす。


「やっぱり味わってから美味しいって言わなきゃって思ってたんですけど、ちょっと怖くって」


そう言ってえへへ、と笑う。
Aちゃんは口角をあげ、宣言するように言う。


「今度天童さんの料理を食べる時はしっかり機能する味蕾つけてくるんで！」


Aちゃんが俺から目を逸らし、下を向いてしまう。
何か言わなきゃ。


「俺、そんなに怖かった？」

「ちょっとだけ」


そう言って笑い、ふと手を唇に当てるAちゃん。
何かに気づいたように顔を赤くしていく。

俺を見て、1人で慌て出す。


「天童さん、と、私って、え？」

「キスしちゃったネェ」


俺がニヤニヤとそう言うと、Aちゃんは茹でダコのように赤くなる。
その様子がおかしくて、愛しくて。

またキスがしたい、そう思ってしまう。
嫌がってない、それだけで俺は舞い上がってしまう単純なやつだ。


「でも、私が被検体になる決心したのは天童さんのおかげですよ」

「俺のキス？」

「もうそれでいいです」

「冷たいっ」


俺から逸らすAちゃんの顔はまだ、ほんのり赤く染っている。

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