【天童覚】カフェ・ノスタルジア【HQ】

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「天童さんと仲良いんだね」

「バイト先のオーナーです」

「意外」


電車に揺られながら、赤葦先輩と肩を並べて椅子に座る。
たまに肩が当たる。

当たった肩の先が微かに熱くなる。


「付き合ってないんだ」

「付き合ってないです、全然違います、ほんと」

「すごい否定すんじゃん」


そう言って笑う赤葦先輩。
相変わらず優しく笑う顔がかっこいい。
赤葦先輩は、と私が言うと赤葦先輩が私の方を見る。


「まだバレー続けてます？」

「今は就活だからな、ちょっとサボり気味かも」

「赤葦先輩とバレー、またしたいです」

「俺も」


そういった後、赤葦先輩が少し気まずそうな顔をして、ごめん、と言った。


「もう大丈夫ですよ、慣れました」

「傷は残んなかったみたいだけど」

「味覚障害だけなんで、そんな支障はないです」


私が高１の頃、男子バレー部の主将だった赤葦先輩。
先輩が打ったサーブが私の頬に当たった。

その時口の中を大きく深く切って、唇の端を少し切った。
血を吐いたし、衝撃で舌を噛んだ。

その後救急車で運ばれ、病院で手術を受けた。
何針だったかは忘れたけど、痛くてしばらく口がきけなかったのは覚えてる。

その時から味を感じなくなった。
最初は酸味だけ感じなかった。
徐々に分からない味が増え、1年経った頃にはもうなにも感じることが出来なくなっていた。

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