final story ページ35
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降谷side
真っ白い病室に、心電図の音だげやけに大きく響く。
ベッドに横たわっているA。
病院に運ばれてから3日。
危険な状態らしい。
お願いだ、目を覚ましてくれ。
Aの声が、聞きたい。
『ぅ…っ…』
「A?!」
すぐにナースコールを押す。
あれはAの声だった。
掠れた声でも、どんなに小さい声でも、俺が拾ってみせる。
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それからすぐに精密検査が終わり、Aはベッドの上で起き上がっていた。
「…A。」
『あ、零… その… 』
Aは、俺を見た瞬間悲しげな顔をした。
なんだ、精密検査で何か言われたのか。
「どうした? 大丈夫だから、言って。」
『っ零… もう、死んじゃうの…』
「は、」
死ぬ? Aが?
どういうことだ、せっかく目を覚ましたというのに。
Aまで、俺を置いていくのか?
俺だって、こんなのうのうと生きていたくないのに、Aまで、逝ってしまうのか?
『なんかね… もうあまり生きられないんだって… だから、その… 言いたいことがあって…』
「言いたいこと…? 」
『うん、いい?』
言いたいことってなんだろう。
俺だって、言いたいことが山ほどある。
…Aが死ぬ前に、言いたいことが。
『零、ありがとう。 私ね、零のこと、好きだよ? 愛してる。 ごめんね、2年前、変なこと言っちゃって… 謝らなきゃって思ってたんだけど、言えなくて…
本当にありがとう、零。 感謝しきれないくらい零にはお世話になったなぁ。本当に、ありがとう。ありがとう。ありがとう。 だめだ、言いきれないよ〜… 』
Aが涙をぽろぽろと流す。
2年前のあの日のように。
『私を、愛してくれてありがとう。 今はわからないけど、私は、2年前からずっと、零のことが "大好き" だったよ。』
「それはこっちの台詞だ。 なぁ、A。俺は、今でもAのことを愛してるよ。 きっと、Aがいなくなっても、ずっと変わらない。」
そっとAに口付ける。
そっとAを抱きしめて。
もう感じられない温もりを、感じて。
Aのおかげで、愛というものを知った。
Aがいたからこそ、幸せだった。
だから、大丈夫。
Aがいなくなっても、俺は生きる。
…Aのために。
『零、ありがとう、愛してる。 別れの挨拶は、まだ、したくないから。』
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今日を、俺は一生忘れないだろう。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時