2nd story ページ4
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仕事を片付けて、突然零が話しかけてくる。
「なぁ、A。明日でもいいから、ポアロに来ないか?」
『は?…あ、あぁ、潜入先の喫茶店だっけ?』
「あぁ。いつも家にばっかりいないで、外に出てみるのも悪くないぞ?」
『ん…いいよ、別に。』
「それはyesということでいいか?」
『どっちでもいい。』
なんでいきなりポアロに。
話は聞いているけど、零は私を一度もポアロに誘うことはなかったからこれからもないと思っていた。
確か「安室透」とか言う偽名を使ってバイトしているらしいけど…
正直想像つかないな。
喫茶店で笑顔を振る舞っている零って。
零はあまり笑わない。
私も笑わないけれど。
やっぱり、私と話していてもつまらないから、か。
笑わないくせに、時折見せる優しさ。
私の天敵のようなものだった。
その笑顔が私の心を惑わせて、揺さぶる。
一体零は私をなんだと思っているのだろう。
まだ、愛してくれているのだろうか。
断ったはずなのに。
それとも、その優しさこそが、零の本当の姿なのだろうか。
もしそうだとしたら、私に笑いかけてくれないのは…やっぱり、私が嫌いだから?
自分も愛してるくせに、告白を断る女。
最低だ、本当に。
今からやり直せるのだろうか。
私と零の関係はこんなに曖昧になってしまっているのに?
零は好きな人はいないのだろうか。
そしたら、離れられるのに。
それで、もう会わなくて済むのに。
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「A、一つお願いがある。」
『ん?』
お願い?なんだろう。
零からって珍しいな。
『なぁに?』
「俺としても本当に頼みにくいのだが、俺と恋人なってくれ。」
『は?』
何を言っているんだ、この男は。
恋人?
「もちろん、「安室透」として。」
『あ、あぁ、なんだ、そういうこと。』
正直焦った。
一度断ったとはいえ、私だってまだ想いが残っているし、動揺してしまうのは仕方ないだろう。
『でも、なんで?』
「あぁ、別に深い理由はない。」
『は?じゃあ、嫌だ。』
「だろうと思った。」
なんで、私が「安室透」と恋人関係にならなくてはならないんだ。
まだ、「降谷零」とも付き合ったことがないというのに。
なんだ、
悩ましい。
もし私が普通の女子だったら、断る理由なんてない。
でも、残念ながら違う。
そんな気軽にyesとは言えない。
…どうしよう。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時