1st story ページ3
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あの日のようだ。
地面を叩きつけるような雨。
ふと、そんなことを思う。
あぁ、もう少しで2年か。
一体いつまで続くんだろう。
零との
「…A、A!」
『…ん?』
「なにぼーっとしてるんだ。早くしないぞお前も俺も寝れないぞ。」
あぁ、そうだ。
今は家で溜まり溜まった任務と言う名の仕事をしているんだった。
ジンから押し付けられた山積みの仕事を目の前に、思わずため息が出てしまう。
『少し、休憩しない?』
「ずっと休憩しているんだが。」
『零がやってよ。』
「可笑しいだろ、それは。俺はジンに銃口を向けられたくはない。」
『私が向けようか?』
「向けられないくせに、言うなよな。」
零は、全部知ってる。
私が、零を殺せないことを。
私が、知り合いを簡単に殺せないことを。
じゃあ、私がなんで言ったかって?
嫌だったんだ。
零に強がられるのが。
私だって、私だって、零に強がりたい。
なのに、私が零に勝てることはない。
そもそも、なんで零は私に本名を明かしてくれたんだ。
なんで、あの日、明かしてくれたんだ。
なんで、私に愛してると言ったんだ。
貴方は私の敵でしょ、そう言いたかった。
でも、言えなかった。
何故なら、私も零を愛していたから。
どんな形の愛か分からないけれど、私は確かに愛していた。
もう二度と言うなって言ったのに。
もう二度と優しくしないでって。
なのに、貴方はまだ優しくしてくる。
愛してるとは言わないけれど、私を大切にしてくれる。
優しさに騙されたくないのに。
寂しさに溺れていた私は、貴方の愛と優しさが嬉しくて、嬉しくて、仕方なかった。
2年過ぎたって、何年過ぎたって、変わらない、気持ち。
零を裏切り者にしたくないって、ただのわがままなのに。
私は貴方の愛を断るしかなかったんだ。
零のことを、公安の裏切り者にはしたくなかったから。
私と結ばれたら、零は公安の立派な裏切り者。
私も組織の立派な裏切り者。
私は構わないけれど、零はだめだから。
零には、最後までこの組織を潰して欲しかったから。
もう少しだけ、この想いは閉じ込めておこう。
いつか、貴方に伝えられる時が来たら、その時までに心の準備をしとくよ。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時