13th story ページ17
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翌日、昨日はあんなことがあったというのに、ぐっすり眠れる私が憎い。
『…おはようございます。』
「おはようございます。あの…」
『あぁ!すみません、私ったら!自己紹介、してませんよね!』
「いえ、僕も同じです。失礼しました。沖矢昴、と申します。」
『えっと、霜野Aです。昨夜はどうも。』
「困っている人がいたら、助けるのは当たり前です。お気になさらず。」
『はい…』
…なんていい人なんだ。
零は赤井秀一だとか疑っていたが、こうなってはやはり零の推理は間違っていたか、そう思うしかない。
そして、朝起きてみると、携帯に大量の着信が来ていた。
全部、零から。
この朝ごはんを食べたら電話をしよう。
そう決心した。
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…決心したのに。
決心したのに、15分も携帯の前で静止している私がいる。
怒っていないかな…
心配かけちゃったかな…
そんな余計な考えが、邪魔をしてくる。
携帯に手をつけても、かけることはできず。
そんなことを繰り返しているうちに、疲れてしまった。
なんで、教えてくれなかったんだろう。
もう一度、考えてみる。
零が私に教えない理由。
なんでなんだろう。
考えても、考えても、浮かんでこない。
第一、私に秘密にする理由なんてそもそもあるのか。
一体、赤井秀一はなんと零に言ったんだ。
考えれば考えるほど、底なし沼に沈んでいく感じだ。
『…なんでだろう。』
そう声にぽつり、と出してみる。
私、信用されていないのだろうか。
私が、誰かに言ってしまいそうだから?
誰に、なんのために?
スコッチのことを言う人なんて、零以外いない。
私が、嫌いだから?
だとしても、教えてくれたっていいじゃない。
知りたいの、
誰も教えてくれなかった、
何度も、掴もうともがいたんだ。
でも、どうしても、掴めなくて。
遠ざかっていく真実が、知りたいのに。
ただ、それだけなのに。
真実を知れば、きっと私は楽になれる。
そう思ったから、ずっと追いかけて来た。
ここまで来て、糸口にも触れられないと言うのか。
私は、まだ子供。
まだまだ、子供。
真実だけを追いかけて。
掴めるはずのない
…馬鹿だ。
いい加減、諦めたい。
なのに、諦められない。
それは、私が生きているから。
生きている限り、真実を追いかけないとだめだから。
『…なんで、いつもこうなるんだろう。』
私の呟きだけが、寂しく、部屋に響いた。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時