11th story ページ15
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降谷side
赤井秀一が生きていた。
風見から連絡を受けて、複雑な気持ちになる。
今までは予想だったことが現実になってしまうと、やっぱり焦るものだった。
まずはAに連絡をしなければならない。
「…赤井秀一が生きている。」
この一言を言うには大変戸惑った。
言っていいかわからなかった。
赤井秀一が生きている。
これを聞いたAはどんな反応をするんだろう。
赤井秀一を恨むのだろうか。
赤井秀一に会いたいと言うだろうか。
何を言われるか、怖かったのかもしれない。
「彼の事は今でも悪かったと思っている…」
そのことを、Aには言えなかった。
スコッチのことについて言われたとは言ったが、内容が言えなかった。
きっと、このことを知った時、Aがどんな反応をするのか電話越しにでもわかっていたから。
…Aは心は壊れてしまうだろう。
散々追いかけてきた
Aは、スコッチのことを大切な一人の仲間として思っていた。
そして、そんなスコッチを殺した奴に今更反省の態度を表されても、むしろ彼女の心は壊れてしまうだろう。
だから、言えなかった。
彼女に、そんな思いはさせたくない。
出来るのならば、スコッチのことだって忘れさせたい。
…彼女がこの先、辛くなるだけだから。
__ツーツーツー
切られてしまった。
仕方ない、か。
俺が彼女に隠し事なんてしたことはあまりなかったから、Aも怒ったのだろう。
Aは、あんなに
あんなに、努力して追いかけているのに。
俺はそれを断ち切ってしまった。
彼女の今までの努力をかき消してしまった。
彼女の希望さえも。
とても、知りたかっただろう。
俺にもそれが伝わってくる。
真実を、教えであげたいのに。
なんでそれが、俺にはできないんだ。
工藤邸を出て、焦り気味でマンションへ向かう。
早く、話さなければ。
もう、取り返しのつかないことになるかも知れない。
直接、言おう。
真実を、教えてあげよう。
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部屋に入ると、中は真っ暗だった。
人の気配がしない。
まさか、家を出てしまったのか。
やはり、怒らせてしまったのか。
早く、探さなければ。
どこかに消えてしまう前に。
もう一度、この腕の中で、Aの温もりを感じたいから。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時