君の大好きな花を。《完》【降谷零】 (ページ11)

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7th story ページ11

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降谷side

今日はポアロのシフトが入っている。
昨夜も遅くまでパソコンと向き合っていたからか、疲れが溜まっていた。
梓さんに言えば簡単に休めるだろうけど、Aだってまだ起きてないし、大人しく出勤することにした。

「…Aには、言わなくていいか。」

外出するには言った方がいいかもしれないけれど、寝ている人を起こすのは気が引ける。
様子だけ見ていこう、そう思って部屋のドアを押そうとすれば、奥から何か聞こえる。

『ぃや、ぅぅ……ぁ…』

「A…？」

不思議に思って奥を覗けば、Aがうなされている。
悪夢でも見ているのだろうか。
起こそうと近づけば、Aは寝返りを打ってまた寝息を立て始めた。

「大丈夫、か…」

一体さっきのはなんだったのだろう。
まぁ、いいか。
今度こそ玄関先に出れば、また物音がして。
今度は一体なんなんだ。
もう一度、部屋の奥を覗けば、Aが一人で泣いていた。
耳をすまさないと聞き取れないほど、静かに。

本当はそこで声をかけるはずだった。
しかし、かけられなかった。
彼女が発していた言葉は、俺の思いがけない言葉だったから。

『はぁ…もう、零があんなこと言うから…』

『れ、い… いなくならないでよ… お願いだから… 神様… 零だけは… まだ… 連れて行かないで… 零がいなくなっちゃったら… 私… もう… どうすれば… 』

俺はここにいる、そう言えなかった。
いつも、死と隣り合わせている仕事だった、公安警察なんて。
国を守るのが、使命。
それ以外、何もない。

もしかしたら、今日死ぬかもしれない。
明日死ぬかもしれない。
何年経っても死なないかもしれない。

いつもAの隣にいる、それが叶う存在ではない。
Aのそばにいたい。
俺だってそう思っている。
しかし仕事柄、不可能だ。
やっぱりAに振られてしまったのは、そのせいだろうか。
いつもそばにいてやれない、常に危険が伴っている、だからなのか。

『なんでなの… なんで、いつもこうなるの… いつも置いてがれるのは私… 零は、まだ行かないで… お願い、もう少しだけ… 一人で生きていくには… この世界は、広すぎるよ… 』

この世界は、広ずぎる、か。
本当だよ、Aの言う通りだ。
仲間を失って、友人を失って、何度も絶望した。
なんで、俺は生きているんだって。
なんで、俺は死なないんだって。

Aも、同じなのか。

じゃあ、俺も願っていいだろうか。

…Aに、いなくならないで欲しいと。